文在寅大統領がまたやってしまいました。韓国側のメディアも「流石に今年は無いのでは」としていましたが、やってしまいました。
文大統領は、去年の国連総会基調演説で朝鮮戦争の終戦宣言が必要だとし、国際社会に支持と協力を謳えました。そして、関連国はおろか、世界そのものから総スルーされました。今年は、北朝鮮弾道ミサイルを発射したばかりで、演説の前日にはIAEA総会で局長自ら北朝鮮の核施設再稼働に対する国際社会に注意を喚起しました(過去エントリー)。そんな流れがあるので、韓国側のマスコミもほとんどは『今年は(去年の終戦宣言のように)破格的な提案は難しいのではないか』としていましたが・・それでも文大統領は、また終戦宣言を言及しました。しかも、去年より具体的になっています。ミサイルや核施設に関する内容は一切ありませんでした。以下、国民日報から引用します。<<~>>が引用部分となります。
<<文在寅大統領が、任期最後の国連総会の舞台で再び終戦宣言を提案した。文大統領は21日(現地時間)、米ニューヨークで開かれた第76回国連総会の基調演説で、「終戦宣言こそ、韓半島(※朝鮮半島)での和解と協力の新しい秩序を作る重要な出発点になるだろう」とし「南・北・米の3者または南北米中の4者が集まって、朝鮮半島での戦争が終了したとともに宣言することを提案する」と述べた。
昨年の国連総会の基調演説でも「朝鮮半島の非核化と恒久的な平和を開く扉」として終戦宣言を提案したが、今度は宣言主体を朝鮮戦争当事国である南北米または南北米中と具体化したものである。文大統領は、国際社会に向けても「朝鮮半島終戦宣言のために力を合わせてくれるようもう一度促す」とし「終戦宣言を成し遂げるとき、非核化の不可逆な進展とともに完全な平和を始めることができる」と強調した・・
・・文大統領は、30年前の南北の国連同時加入について「決して分断を永続化するための措置ではなかった(※南北の国連同時加入は、南北ともに内心では分断の永続化を想定しての措置ではないのか、との指摘があります)」とし「南北が周辺国と協力するとき、朝鮮半島の平和はしっかりと定着、北東アジア全体の繁栄に貢献、後に協力で平和を成し遂げた『韓半島モデル』と呼ばれるだろう」とした・・
・・ただし文大統領は、最近相次いだミサイル発射など北朝鮮によって朝鮮半島で緊張が高まっていることには触れなかった。文大統領はコロナパンデミックにより「地球共同体の時代」が誕生したとしながら「地球共同体の時代は、お互いを受け入れる・協力する時代だ。国連が導いて行く連帯と協力の国際秩序に韓国は積極的に参加する」と述べた。地球共同体が解決しなければならない当面の課題としては、コロナ危機からの包容的回復、気候の危機対応、朝鮮半島の恒久的な平和を含む平和安全生活などを提示した・・>>
「国連による国際秩序に積極参加する」なら、つい前日にIAEAが指摘した「明らかに安保理決議違反」である北朝鮮の動きを指摘すべきでした。そんなこともせずに終戦宣言を~と言っている時点で、文大統領の言う「世界」には北朝鮮しかないことがよく分かります。
韓国の左派陣営の人たちは、「終戦宣言」こそが在韓米軍撤収の名分になると考えています。例えば、文正仁(ムンジョンイン)当時 大統領外交・安保特別補佐官は、フォーリン・アフェアーズ(Foreign Affairs)の寄稿文で「もし、平和協定が締結されれば、在韓米軍は駐留を正当化するのが難しいだろう」と主張したりしました(2018年MBN、動画の自動再生にご注意ください)。
それに、主に米国側からは、「そもそも終戦宣言と非核化は本当に関係があるのか」という指摘もかなり出ています。分かりやすいのが、去年10月(文大統領が国連総会で終戦宣言を言った後)、MIT大学のビピン・ナラン教授の指摘です。「北朝鮮は、『終戦宣言は、プレゼントでもなければ、北朝鮮を武装解除するための交渉カード(bargaining chip)でもない』としている。終戦宣言と核施設・在庫廃棄宣言をトレードしないと自ら言っているのだ。北朝鮮が望んでいるのは、ただ、制裁緩和措置だけだ。我々は、その点を見逃してはいけない。朝鮮戦争の終結のために、北朝鮮が核施設を廃棄する、だと?私には、そうは見えない」(ニュース1、2018年)
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