韓国と中国、政府レベルで「サプライチェーンの協力・強化のためのMOU」を締結・・このタイミングでここまでする理由があるのか

7月の末頃、朴振外交部長官が訪中して外相会談を開くという話と、ほぼ同じタイミングだったと記憶しています。当時、尹錫悦(ユンソンニョル)政権が中国側にサプライチェーン協力を強化する案を提示する、という報道がありました。本ブログでも紹介しましたが、率直に言って、「えっ?」と思いました。いくらなんでもこのタイミングでこんな話を政府レベルでするはずがないだろう、と思っていたです。チャンネルA以という保守側のメディアの記事、前にも紹介したことがありますが、必要な部分だけ<<~>>で引用してみます。

<<・・政府が、米国が主導する半導体同盟、いわゆる「チップ(Chip)4」参加を検討している中、外交当局が米国と中国の両方の反発を最小化するために具体的な戦略検討案を議論中であることが確認されました・・・・中国とは、先端素材などのサプライチェーンを強化する協力方案を肯定的に議論中であることが確認されました。また、外交情報筋によると、「先端素材の生産に代表される先端産業をはじめ、気候環境対応、デジタル産業、シルバー産業など多様な分野で、中国と協力できる」とし「中国とのサプライチェーン安全管理チャネルを強化、韓国企業の中国進出と中国への投資活性化が成し遂げられる代案を設けている」とのことです(チャンネルA・・>>

 

・・という内容で、事実上、チップ4加入の代価として、中国とサプライチェーンの強化を約束する、そんな内容でした。それから予定通り韓中外相会談がありましたが、これといった進展がなかったこともあり、それからこの話はあまり耳にしなくなりました。ですが、毎日経済聯合ニュースなど複数のメディアの報道によると、27日(記事が載ったのは28日の午後からです)、オンラインで開かれた中韓経済長官(財務相、韓国の場合は企画財政課長)会議が開かれました。そこで、両国がサプライチェーン関連でMOUを締結した、とのことでして。

大まかには、「サプライチェーンの不安定において、政策意見を共有し、協力を強化する。 両国政府の国長級関係者が参加するサプライチェーン協力調整協議体も新設する」ことにも合意した、などです。具体的な話がどこまで進んでいるのかはわかりませんが、MOUとはいえ、このタイミングで政府レベルでこんな発表をするとなると、対外的にあたえる『メッセージ』としては、効果があります。中国としてはともかく、ユン政権がここまでする理由があるのか、いったい何がしたいのか、まったく分かりません。以下、各紙、<<~>>が引用部部となります。

 

<<・・新型コロナにより2年ぶりに出会った韓国と中国の最高位経済当局者が、エネルギー・原材料などのグローバルサプライチェーンの不安定に備えた協力強化を約束した。両国は経済分野実質協力、サプライチェーン・新産業協力、第三国共同進出協力、サービス産業協力、炭素ゼロ政策交流を主要議題として議論した。基材部関係者は「両国交易30周年(8月24日)を記念して、停滞した経済協力関係を既存の両国間の相互尊重基調下で活性化することに共感した」と説明した。韓国側は、2030年、世界博覧会の釜山広域市開催のための中国の支援も要請した・・

・・両国政府は合意議事録と了解覚書(MOU)3件を締結した。まずサプライチェーン協力強化MOUを結んだ。サプライチェーンの不安定問題について政策意見を共有し、協力を強化する。両国政府の国長級関係者が参加する「供給網協力調整協議体」を新設することにも合意した。ただし、いわゆる限韓令解除のための成果の導出は不十分だった。韓国は今回の会議でコンテンツ業界の意見を反映し、ゲーム・映像・放送・コンテンツをはじめとする文化産業交流活性化を中国に提案したが、具体的な協力案は出なかった。中国は生活サービス分野で韓国との協力を提案するだけだった。政府のある関係者は「今回の会議でそれと関連した成果を出すのは無理だった」とし「韓国コンテンツ業界の意見が合意文に盛り込まれただけでも、小さな成果だ」と話した。(※中国の)電気自動車(EV)バッテリー補助金問題も、合意案を導出することはできなかった(毎日経済)・・>>

 

中国側は、さっそく肯定的な反応を出しました。官営メディアグローバルタイムズ(人民日報の英文紙)は、「やはり、中国との信頼を維持したいと思っている。それがよく分かった」、と評価しました。しかし、またもや『韓国側がちゃんと実行するのか、見守らないとならない』という指摘も忘れませんでした。確か、いわゆる『3不』に対しても、ほぼ同じ文章が官営メディアに載ったりしました。今回も、結果を見てから判断するというスタンスを明らかにしたわけです。ここからは聯合ニュースです。

 

<<・・ドゥン・シャンルン中国社会科学院国家戦略研究所先任研究院は、「今回の合意は、中韓が安定的なサプライチェーン維持に高い期待を持っていることを示す」と明らかにした。ドゥン研究員はまた「韓国は自国の核心製品を輸出するために安定した中国市場が必要であり、中国も産業発展のために韓国が必要だ」と強調した。続いて彼は「両国がサプライチェーン協力を強化することにした初のMOUを締結し、国長級の『サプライチェーン協力調整協議体』を新設したのは、新型コロナ中、サプライチェーンに起きた新しい問題を迅速に解決するのに非常に実質的な意味がある」と評価した。

ダズガン社会科学院東北亜研究所長は、「今回のMOU締結を通じて、韓国は米国のチップ4圧力の中でも、中国と相互信頼と着実な協力を維持したいという意志を表わした」と分析した。ダ所長は「韓国は自国利益を最大化するために、半導体60%を輸出する最大輸出国である中国と同盟国である米国との間でバランスを維持するために努力している」と主張した。続いて彼は「今回の協定は、両国間の協力を強化するのに役立ち、韓国がチップ4加入と関連して、中国の誤解を解消するためのものと見られるが、韓国の実際の行動は見守る必要がある」と力説した(聯合ニュース)・・>>

 

繰り返しになりますが、具体的なことをどこまで話し合ったのかはまだ分かりません。MOUだから、これ以上の内容は無いかもしれません。しかし、「なんでこのタイミングでこんな内容を?」という疑問に、ユン政権はどう答えるのでしょうか。米側からも、ほぼ間違いなく同じ質問が来ると思われますが。それに、電気車用バッテリー補助金・・米国のインフレ抑止法関連で、長官が「WTOまで持っていく」と話したばかりですが・・中国側とも似たような案件があって、成果がなかったようですね。中国に対しては、「WTOまで持っていく」とか言わなかったのでしょうか。最後に、引用部分の中国専門家たちの意見・・まるで、先生が子を褒めるような書き方に見えます。これは、私の読み方の問題でしょうか。もう(mou)わけがわかりません。

 

 

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