GDPが増えると話題になっている韓国ですが、なぜか「経済成長しているのに雇用が増えない(若い人たちの雇用はむしろ大幅に減っている)」という現象に見舞われています。ええっと、各記事には雇用弾性値という単語が出てきますが、これは「経済成長率により、雇用増加率がどうなるのか」を表す数値となります。韓国の場合、これが今年0.24になりそうだ、とのことです。1~3月データからして0.16です。妙ですね。GDPが成長するぞ~としているのに、なんで雇用が増えないのでしょうか。ちなみに2018年にもっとも低かったですが、この理由は、当時の文在寅政権での急激な最低賃金の引き上げ(2年間で30%近く上昇)が原因でした。当然、企業は採用を減らし、人件費を減らすために様々な「抜け道」を探すようになりました。その影響でした。
ちなみに、この雇用弾性値、日本の場合は0.3~0.5が出て、アメリカの場合は約0.6です。ただ、この雇用弾性値、グーグルのAI「ジェミニ」といろいろ話してみましたが、日本の場合は大まかに0.3~0.5が出ますが、景気が悪くても企業が雇用を維持しようとする傾向があるし(他国に比べてまだまだリストラを避ける風潮がある)、人手不足だから全体的に雇う、などの理由があって、他の国とはちょっと事情が異なる、とも。GDPが成長しているのに雇用ショックという記事が載ったり、その成長による働き口の増加率が急激に低下したりする、今の韓国。なんでこんなことになったのでしょうか。朝鮮日報(朝鮮BIZ、5日)、デジタルタイムズ(5日)の記事と、AIジェミニの分析などから、その原因を探ってみます(ミステリー番組ふうに)。
<<・・すでに雇用のない成長は確認されている。1~3月期の経済成長率(3.8%)と就業者増加率(0.6%)で算出した雇用弾性値は0.16だ。今年1~5月の青年層(15~29歳)就業者の前年同月比の増加率は、マイナスを記録した。今年に入って5カ月連続で就業者が減ったのは、全年齢層で15~29歳が唯一だ。半導体好況で上半期の輸出は最大を記録したが、雇用までは影響が及んでいないようだ。半導体産業は資本集約的で雇用創出効果は大きくないからだ(朝鮮日報)・・>>
<<・・半導体の超好況と2%台の経済成長率も、若者の求職者たちにとっては「他人事」だった。それまで質の高い雇用を提供してきたサムスン電子などの大企業の若者向け雇用も、大規模な産業再編などの影響により減少した。ここに人工知能(AI)によるIT分野の雇用代替現象まで加わったことで、質の高い雇用を求める若者たちが立たされる瀬戸際はさらに狭まっている。政府は若者の雇用問題解消に向けて総力を挙げている。しかし、「底の抜けた器」に予算を注ぎ込むよりは、雇用の創出や人材育成を誘導できる方向へと進むべきだというのが専門家たちのアドバイスだ。5日、国家データ処の国家統計ポータル(KOSIS)に公開された雇用行政統計によると、今年5月に雇用保険に加入した30歳未満は約223万3000人で、1年前より約6万5000人(2.8%)減少したと暫定集計された。注目すべき点は、AIに関連する業種での減少傾向が顕著だった点だ。情報通信業では1年前より9.3%減少し、専門・科学および技術サービス業では4.1%減少した・・
・・実際に、最近の主要大企業ではAIを活用して広告制作を行うなど、若者の雇用を削減する傾向にある。韓国経済は半導体がどうにか引っ張り上げている状態だが、問題は雇用の創出能力が他の業種に比べて低いという点だ。韓国銀行(中央銀行)によると、2022年基準で半導体産業の就業誘発係数(需要が10億ウォン増えたときに生まれる雇用数)は1.86であり、製造業平均(4.85)や自動車産業(5.41)に及ばない。その結果、去る5月に発表された韓国開発研究院(KDI)の経済見通しと韓国銀行の見通しを基に分析したところ、今年の雇用弾性値は0.24と、両機関の予測ともに0に近い数字となった。雇用弾性値は就業者増加率を経済成長率で割る方法で算出されるが、0.24は2018年(0.13)以来の最低水準である(デジタルタイムズ)・・>>
ジェミニがまとめてくれた「他の理由」をさらにまとめてみると、この0.24も、ほとんどが高齢者雇用によるものだと思われます。まず、韓国で雇用増加率が増えない理由として・・<<その1. 「成長の主役」が雇用を生まない構造である(成長と雇用の乖離)。韓国のGDP成長を大きく牽引しているのは、サムスンやSKハイニックスに代表される半導体、自動車、化学といったハイテク・装置産業の大企業です。これらの産業は、「人は増やさないけれど利益は爆発的に出す」という構造になっています。経済全体は成長する(GDPの分母は大きくなる)しかし、成長している中心地では雇用が増えない(分子が伸びない)結果として、「経済が成長しても雇用が全然増えない=雇用弾性値が下がる」という現象が起きます。
2. 「雇用のミスマッチ」と若者の就職難。「雇用が減っている・就職難」という話は、主に若者(青年層)の間で起きている深刻な現実です。韓国の若者は非常に高学歴化していますが、彼らが求める「大企業や公務員などの質の高い仕事(良い雇用)」は上述の通り、門戸が非常に狭くなっています。 一方で、中小企業やサービス業は人手不足なのですが、賃金や待遇の格差が大きすぎるため、若者は何年も就職浪人をしてでも大企業を目指します。統計上は「就業者」にカウントされない(あるいは失業者や非労働力人口になる)若者が溢れているため、世論としては「深刻な就職難」という声が強くなります。
3. 数値を底上げしているのは「シニア層の短期雇用」では、なぜ雇用弾性値が「マイナス」にならず「0.24」にとどまっているかというと、高齢者の就業者が急増しているからです。韓国は日本以上のスピードで少子高齢化が進んでおり、年金制度がまだ十分に熟していないため、働かざるを得ない高齢者が非常に多いです。政府も財政を投入して「高齢者向けの短期アルバイト・公共雇用」を大量に作っています。つまり、大企業の良質な雇用は、 経済は成長するのに増えない。若者の雇用はミスマッチなどでむしろ減っている(マイナス要因)。 高齢者の雇用だけ、政府の対策や生活苦から、低賃金の仕事が大量に増えている(プラス要因)。これらが合算された結果、薄薄としたプラスである「0.24」という低い数値が出ているのです(ジェミニのまとめをさらにまとめたもの)>>。 すなわち、ここでいう0.24も、政府がばらまいた「簡単なお仕事」による側面が大きい、ということになります。実際の雇用弾性値は、すでに文政権より良くない状態になっているかもしれません。当時より、「簡単なお仕事百裂拳」政策は大幅に増えていますので。
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年8月30日)<韓国リベラルの暴走>です。韓国新政権のこと、日韓関係のこと、韓国において左派という存在について、などなどに関する本です。・準新刊は<THE NEW KOREA>(2025年3月2日)です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。・既刊、<自民党と韓国>なども発売中です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。