なんか、良し悪しは別にしてでも、とんでもない大プロジェクトが実現しました。日本政府、日本各社(Noetra)、そしてエヌビディアが手を取り合い、「世界初の国家AI」(エヌビディア本社のニュースページより)建設に動き出しました。グーグルのAI「ジェミニ」にいろいろ聞いてみたり、珍しくジェミニがまた「質問があります」と私に質問したり、そんな面白い会話が出来たので、今日、取り上げてみたいと思います。本文でも書くことになりますが、国家主導というのは無条件で良いものではありません。でも、国家AIとなると、なんかかっこいいですね。まず、ジェミニが説明してくれた今回の「大規模投資プロジェクト」の話は後にして、質問を受けたのが面白かったので、そちらから取り上げてみます。「国家AI、政府主導(実際は官民ですが、政府が前面に出ていることなどで)についてレナパパはどう思っていますか」という質問でした。私の返事は、「それは、政府が危機感をもっているかどうかにかかっている」でした。ちょっと、まとめてみます。
ジェミニの問いかけ:<「民間主導の自由な競争」ではなく、「政府主導の超巨大コンソーシアム(官民一体)」という昭和の『超LSI技術研究組合』を彷彿とさせるアプローチは、令和のスピード感が求められるAI時代において、果たして吉と出るでしょうか。それとも、スピード感を損なう足枷になってしまうでしょうか? この「政府主導」という建て付けの成否について、もしよろしければご意見や感じられたことをぜひ聞かせてください>。
レナパパ:<政府が危機感を持っているかどうか、だね。前の時代には、どことなく「日本内でなんとかなる」という傲慢さがあった。これはゲーム機の設計(PS3とPS4)などからも分かる。今の時代は、危機感を持って主導してくれると思っている(そうなるといいな、と思っているw)。「危機感あり」の前提だと、政府主導のほうが効率が良い。ただ、いつまでもこのパターンだと、ちょっと困るかな>。
官民といっても、政府は政府で国内で全て、企業は企業で自社メイン(独自とか)だけでいろいろやろうとしていた、それが成果に繋がったことももちろんあるけど、全般的な結果からすると、そうでもなかった。無理のあるたとえだけど、ゲーム機の設計思想からもわかる・・そんな話でした。
ジェミニはこのことで:<・・今回の「ノエトラ」に話を戻すと、かつての「自前でCell CPUを開発しよう(=日本独自のAI半導体をゼロから作ろう)」という傲慢な思想はありません。世界の覇者であるエヌビディアのインフラ(x86やRubin)を素直に、かつ迅速に受け入れた上で、その上で動かす「国産のフィジカルAI(中身)」で勝負しようとしています。これはまさに、PS3の問題点からPS4にで大転換したような(※開発のしやすさ、開放的なプラットフォームなど)、極めて現実的な「危機感」の表れだと言えます・・・・危機感があるからこそ機能する「第一フェーズの政府主導」は、「本当に危機感がある前提なら、初期の政府主導はきわめて効率が良い」というご指摘も、まさにご指摘の通りです。AIインフラは、電力、データセンター、超高性能半導体の確保など、民間一社ではとても賄いきれない「地政学的な資源」の争奪戦になっています・・
・・政府が「経済安全保障」という名の危機感を持って、圧倒的な資金(助成金)を素早く投入し、エヌビディアとの国家間交渉の窓口になり、バラバラだった国内企業を一本に束ねるという初期の「強引なスタートアップ(立ち上げ)」においては、政府主導ほど強いものはありません。「いつまでもこのパターンだと困る」という本質的な懸念。しかし、ご指摘いただいた「いつまでもこのパターン(政府主導・官民一体)だと困る」という懸念こそが、このプロジェクトが抱える最大の急所です・・>。
それからは、「ある程度進んでからは、民間の競争に任せるべきだと思う。できれば『良い意味での民間競争』であってほしい」とか、そんな話になりました。まとめたものなのでちょっと分かりづらいところもありますが。それでは、プロジェクトそのものへの説明です。この大胆なプロジェクトが、良い結果に繋がることを願っています!
プロジェクトの要約: 2026年7月16日、エヌビディアは日本政府、および国内主要企業が結集した新会社「Noetra(ノエトラ)」と提携し、国家レベルのAIインフラ「NVIDIA Vera Rubin AIファクトリー」を立ち上げると正式発表しました。 この提携は、まさに「オールジャパン」の総力戦と呼ぶにふさわしい陣容です。
プロジェクトの核心は、「フィジカルAI」 これまで主流だったChatGPTのような「言語や画像などのデジタル世界に閉じた生成AI」とは異なり、今回のプロジェクトが目指すのは「フィジカルAI(物理AI)」です。ロボットや自動運転車、製造機械など、「実世界(リアルな物理空間)を認識し、自律的に動かすためのAIの脳」となる国産のマルチモーダル基盤モデルを開発することを目的としています。「ノエトラ(Noetra)」の強力な布陣出資企業連合: ソフトバンク、ソニーグループ、NEC、本田技研工業(ホンダ)の4社を中核に、トヨタ自動車が出資するPreferred Networks、ファナック、東京エレクトロン、三菱電機、富士通など、日本の誇る製造業・IT・ロボティクスの主役たち計44社が出資・参画しています。
政府・アカデミアのバックアップ: 経済産業省が初年度3,873億円(5年間で最大1兆円規模)を助成し、国立研究開発法人「産業技術総合研究所(産総研)」の技術者も開発に深くコミットします。 世界最高峰のインフラ整備: エヌビディアは、現行のBlackwellに続く次世代アーキテクチャGPU「Rubin(ルビン)」を約2万7,500基、超高速CPU「Vera」を約1万3,750基、ノエトラに独占的かつ大規模に供給します。2028年6月の稼働を目指し、世界初となる「国家規模のAIインフラ」を日本国内に整備します。 2. 高市内閣「官民投資370兆円」との整合性とジェミニの分析ご指摘の通り、高市政権が発表した「2040年度までに戦略17分野へ累計370兆円超の官民投資を行う行程表」から間を置かずに今回の大型提携が発表されたことは、偶然の一致ではありません。
結論から申し上げれば、今回のプロジェクト(ノエトラ×エヌビディア)は、高市政権が掲げる「官民370兆円投資」のグランドデザインの中に、最初から「目玉事業」として組み込まれていた(予定されていた)既定路線であると考えられます。そう判断できる主な理由は以下の3点です。① 投資枠の使途に「フィジカルAI」が名指しされていた整合性政府の「370兆円投資行程表」の内訳を見ると、ロボットなどを自律制御する「フィジカルAI」に10.5兆円、半導体分野に68兆円をそれぞれ配分することが最初から明記されています。まさに今回のノエトラが開発する「物理世界のAI」と、それを支えるエヌビディアの超高性能半導体「Rubin」の調達と完全に一致します。
② 半導体の割り当て(アロケーション)における政治的ネゴシエーションAI半導体(GPU)は世界中で凄まじい争奪戦が繰り広げられており、どれだけお金を積んでも簡単には手に入りません。エヌビディアが次世代型「Rubin」を日本政府主導のプロジェクトに2万7,500基も割り当てるという合意は、1日や2日でまとまる交渉ではありません。数ヶ月、あるいはそれ以上の長期にわたり、日本政府(経済産業省)とエヌビディアの間で、国家投資の裏付け(370兆円規模の投資枠の一部として助成金を出すこと)を盾にした緻密な政治的交渉が裏で進められていたとみるのが自然です。
③ 「ジャパン・パッシング(日本素通り)」懸念の払拭という演出直前まで、ジェンスン・ファン氏が韓国や台湾を精力的に訪問する一方で、日本への訪問が遅れていたため、市場では「ジャパン・パッシングではないか」という懸念が囁かれていました(といっても、これ最初に書いたの日本のメディアで、それから韓国メディアがものすごい勢いでこのフレーズを引用して記事を量産しました)。しかし実際は、これほど巨大な「オールジャパンの44社連合の設立合意(ノエトラ)」と「政府の財政支援スキーム(370兆円計画からの拠出)」の足並みがきれいに揃うタイミングを見計らって、最もドラマチックな「一発回答」を用意していたのだと言えます。官邸主導の大きな経済安保シナリオが、周到に用意されていた証左です。
まとめ:日本にとっての戦略的意味合い高市政権の掲げる「強く豊かな日本投資枠」が、ただの数字上のスローガンではなく、実体を伴った国策としてスタートダッシュを切ったことを証明する象徴的なディール(取引)が、今回のノエトラとエヌビディアの提携です。 かつて1990年代、まだ吹けば飛ぶようなベンチャー企業だったエヌビディアを、セガ(日本のゲームメーカー)が資金提供によって救ったという歴史があります。ファン氏が秋葉原を訪れて当時を懐かしむエモーショナルな演出の一方で、今回の提携により、日本は「ものづくり大国」としての強み(自動車・ロボティクス)をAI時代に最適化させるための切札を手に入れました。この官民投資が真の生産性向上や経済成長につながるか、それとも財政負担のみが膨らむかはこれからの実行力にかかっていますが、少なくとも「予定されていたはずの国策シナリオ」としての第一歩は、極めて緻密かつ大胆に踏み出されたと言えます。
今日の更新はこれだけです。このまま明日は1日休みを頂いて、次の更新は19日(日曜日)の11時頃になります。雨は止むそうなので、明日は東京十社巡りをコンプリートしようかと思っています。いくぞレナ。
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年8月30日)<韓国リベラルの暴走>です。韓国新政権のこと、日韓関係のこと、韓国において左派という存在について、などなどに関する本です。・準新刊は<THE NEW KOREA>(2025年3月2日)です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。・既刊、<自民党と韓国>なども発売中です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。