ちょっと変わった視点の記事があったので取り上げてみます。いま韓国社会には「投資に失敗した」という話が蔓延していますが、それが「自分のせいではないとするアピールとしての側面がある」というのです。いままで政府レベルで「失敗を税金で補填する」などの政策(徳政令とも言えますが)が多かったので、そういうのがいけなかった、という趣旨です。ル・デスクというネットメディアですが、なんか、大手ポータルでもニュースを提供するようになったようで、取り上げてみました。個人的に、SNSなどにそんな話を書くことについて責任回避アピールだとする意見には、「そういう側面もあるかもしれないけど、そこまで言う?」とも思っています。自分でも呆れて書いてしまった人も多いのでは。
もっとも問題なのは、大儲けや大損「だけ」盛り上げてしまう社会とメディアの風潮、そして、投稿内容が嘘が多いなどの側面のほうが、もっと問題ではないだろうか、とも。ただ、いままで「借金について、自己責任だという意識があまりにも弱い」という話は私もずいぶん前から書いてきましたし、「政策失敗」という側面を必要以上に強調する動きがあるのも事実。そこで、記事の指摘そのものよりも、「社会の分断」という側面を見せることができればと思い、取り上げてみました。以下、<<~>>が引用部分です。
<<・・最近の株式市場の暴落により、社会全体で投資失敗に伴う経済的な苦境を訴える声が渦巻いている。こうした状況に対し「典型的な国家衰退の兆候」との評価が登場し、注目を集めている。投資という行為自体、全面的に個人の判断による決定であるにもかかわらず、公然と「失敗した」と騒ぎ立てるのは、結局のところ「誰かに代わりに責任を取ってほしい」という暗黙の要求に他ならないからだ・・・・特に若者たちによる評価はより冷酷だ。投資には最低限の元手(種銭)が必要であることから、「多くの人が深刻な就職難で元手を準備する機会すらないのに、さらに儲けようと投資して失敗したと騒ぐのは、あまりにも身勝手極まりない」といった反応が少なくない(※原文では『ノルブのようだ』となっています。ノルブは韓国の古い物語に出てくる人物で、父の遺産を受け継ぎながらも、弟で善良な性格のフンブとその家族を家から追い出してしまいます、すなわち『十分持っているのに、さらに欲しがる』という意味になります)・・
・・最近、オンラインコミュニティやSNS上には、個人の不運や苦境を嘆く投稿が急増している。投稿者は様々だが、内容は似たり寄ったりだ。株式市場の好況期に巨額を投資したり、融資、借金までして投資を試みたりしたものの、最近の株価暴落で甚大な損失を被ったという内容である。そこには必ず登場する文言もある。「希望がない」「もうここまでだ」「自暴自棄」など、見る人の同情心を誘う表現が溢れている。これらの投稿には決まって応援や励ましのコメントが寄せられている・・・・しかし、取材に応じた多くの市民は「個人の心理や状況を外部に発信すること自体が何らかの意図を持った行為であり、そこに同情や励ましの反応が集まること自体が問題だ」という反応を示した・・・・投資行為自体が全面的に個人の判断と意志によって行われ、投資利益もすべて個人のものであるという「事態の本質」が覆い隠され、「可哀想な隣人」だけに焦点を当ててしまえば、今後も投資行為に対する責任を外部へ転嫁するモラルハザードが蔓延しかねないからだ・・
・・ (※取材に応じた人たちが話した内容として)「少し前、うちの会社内の匿名掲示板で『結婚資金で株式投資をして失敗した』という投稿を見たことがあります。正直、それを見た瞬間に一番最初に思ったのは『本当に情けない』ということでした。一生を共にする人と新しくスタートするための大切な資金でギャンブルをしたのと何が違うのでしょうか」・・・・「その投稿のコメント欄に『政府のせいだ』と政府を批判しながら同情・応援する内容もありましたが、もしそれが我が国の主流な世論なのだとすれば、この国の未来はないと言っても過言ではないと思います」・・
・・深刻な就職難で元手(※投資できそうな資金)を準備する機会すらない周囲の人々を、二重に傷つける「贅沢な悩み」だという指摘が特に多かった。今年で就職活動2年目だというキム・ジュヒョンさん(27歳・男性・仮名)は、怒りを露わにした。「株式投資だって、就職して会社生活をしながらある程度元手ができてからやるものではありませんか。その元手すら作れない人が大半なのに、欲を張って貯金を吹き飛ばしておいて『もうここまでだ』だの何だのと言うなら、就職すらできていない人はどうなるんですか」、「そういう投稿に『元気出して』などとコメントしている人たちも本当に偽善的ですし、そうした偽善のせいで私たちの社会が駄目になっていくのです」・・
・・実際、過去にも個人が自ら判断して行った行為が良くない結果につながった際、権力が直接的・間接的に介入して事態を収拾(有耶無耶に)した事例は少なくない。その度に世論の内外からは、不公平さや不合理さを指摘する声が絶えなかった。先立って行われた「政府による長期債務者の借金帳消し措置」をめぐる議論がその代表例だ。昨年、政府が「7年以上滞納している5,000万ウォン以下の債務者の借金を免除する方針」を推進した際、国民の過半数が「反対」を叫んだ。また、私募ファンドの焦り付き問題が浮上する度に繰り返される「不完全販売の主張」(※金融機関がちゃんと説明しなかったという理由で、投資家は損失を認めないとする主張)と「100%補償の要求」に対しても、「損が出れば不完全販売で、利益が出れば成功した投資なのか」という批判の声が渦巻いた。
イム・ミョンホ檀国大学心理学科教授は、次のように説明する。「最近、投資の失敗談をSNSやネットコミュニティで積極的に共有する現象は、単なる感情表現を超えて、他者からの共感や『責任の分散』を期待する心理が一部反映されていると見ることができます。もちろん、精神的な苦痛を訴えること自体を否定的に捉える必要はありませんが、失敗の原因を外部環境や社会のせいばかりにする文化が拡散すれば、自分の意思決定に対する責任感が薄れてしまう可能性があります。特に、就職難や資産格差を痛感している若者層からすると、投資する余裕すら取れない人もいる中で、損失に対する同情まで求めてくると受け取られやすく、相対的な剥奪感(※本当は自分の分を奪われたわけでもないのに、まるで奪われたように思う不公平感などを意味します)がさらに大きくなる可能性があります」(ル・デスク)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年8月30日)<韓国リベラルの暴走>です。韓国新政権のこと、日韓関係のこと、韓国において左派という存在について、などなどに関する本です。・準新刊は<THE NEW KOREA>(2025年3月2日)です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。・既刊、<自民党と韓国>なども発売中です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。