尹錫悦政権の『用北』路線は成功するのか

現在、本ブログは更新数を減らし、臨時緊縮運営中です。仕事も含めて、『自分で』やるべきことがいろいろ重なってしまったからです・・・・が、妙なことに、頑張っていろいろやっているのにやるべきことがあまり減らない、不思議な現象が起きています。でも問題ありません。参議院選挙が終わればなんとかなるでしょう(白目

前にも同じ趣旨を書いたことがありますが、私は、尹政権は『北風』にかなり期待している、と見ています。北風とは、国内の政治などに、北朝鮮、詳しくは南北関係の特殊性を利用するという意味です。一般的に、対北政策を強硬なものにすると、保守陣営からの支持率が上がります。それをブーストさせるためには、むしろ北朝鮮も強硬なスタンスを示したほうが、保守政権にとっては役に立つ、よいうのです。韓国側はこれを日本にトレースして、「北朝鮮問題で自民党が支持率を上げている」と主張したりもします。

 

北風、しいていうなら、『用北』。いままでは、基本的に国内で支持率を上げるために使ってきたこの政策を、尹政権は対日政策にも適用し、それで有利なポジションを占めようとしています。文政権のときに特にそうでしたが、韓国はいま国際情勢に出遅れています。というか、中国との関係を考えると、積極的に出ることもできません。

そこで、『中国問題で遅れているが、その分、北朝鮮問題での米国への協力を浮き彫りにして、米国に対して韓国の重要性をアピールし、日本から譲歩を受けとる』こと。この路線が、尹政権の外交において大きな流れとなります。北朝鮮問題を強調すればするほど、日本より、韓国が有利になると、主導権を握ることができると、思っているわけです。

 

尹錫悦大統領が、米韓首脳会談などでいつも『米韓同盟のアップグレード』を叫びながらも、中国関連でははっきりした態度を示さないのも、この『用北』を信じているからです。中国関連であまり前に出なくても、米国との関係も維持できるはず、ですから。日本関連でも、尹政権はこう考えています。『日米韓協力がないと北朝鮮問題は解決できない。韓国がこの件に積極的に協力するという姿勢を示せば、日本は安保のため、各懸案においての解決を急ぐことになる』。

この動きを、1年前に指摘した記事があります。1年前に尹氏の「グランドバーゲン」主張から「いわば、日本との各懸案と安保問題の『トレード』だ」、「北朝鮮問題での協力を強調して、日本からの譲歩を勝ち取るつもりのようだが、そううまく行くだろうか」、とまで予測したこの記事、ちょっと意外(失礼)ですが、ハンギョレ新聞です。2021年6月29日、大して関係もない尹奉吉記念館で大統領候補として出馬宣言を行った尹錫悦氏は、いきなりグランドバーゲンという言葉を持ち出しますが、その日の記事です。以下、<<~>>が引用部分となります。

 

<<尹錫悦(当時)前検事総長が29日、尹奉吉記念館で開かれた大統領選挙出馬記者会見で文在寅政府の韓日関係悪化と関連して、「理念偏向的な◯槍歌を歌ったせいでここまできた」と批判した。 「竹◯歌」は、日本政府の輸出管理◯格化のことで、2019年7月、曺国(チョ・グク)元法務部長官が自分のフェイスブックに掲載した歌だ。

「政府が政権末期に収拾を試みたところで、うまくいかないだろう」と現在の状況を分析した彼は、「韓日関係では、過ぎたことに関しては、私たちの子孫が正確に記憶するために真相を明確にしなければならないが、未来は、私たちの次の世代のために実用的に協力しなければならない関係だと思う」と語った。また「文政権で発生した多くの日韓の間の懸案を、全部一つのテーブルに置いて、『グランドバーゲン(※一括交渉)』をする方法で、問題にアプローチしなければならない」と述べた。

ユン前総長は、具体的には言及しなかったが、日本が求めてきた安全保障協力分野で、韓国が足並みをそろえる対価として、各懸案において多少の譲歩を得ようとする構想だと、解釈することができる。しかし、日本政府が示し続けてきたスタンスを考えると、日本が「グランドバーゲン」構想に好意的な反応を示してくれるとは期待できそうにない状況である・・>>

 

それからは、本ブログで毎日取り上げたように、米国はまだ尹政権を、いや『韓国』を、信じていません。クアッド参加を米国側から先に断ったのが、その証拠の一つになるでしょう。米韓首脳会談に比べ、日米首脳会談は完全に「上位互換」だったし、北朝鮮がミサイルを発射したときにも、米国の戦略資産は日本までしか展開されませんでした。

米国は、北朝鮮問題を、中国関連問題の一部分として見ており、『インド太平洋』を視野に入れた軍事協力を要求するようになりました。しかし、尹政権は今でも『日本とは、あくまで北朝鮮関連だけでの協力』路線を維持しています。そして、ブリンケン長官との会談のあと、何を言われたのか、パクジン外交部長官はGSOMIA正常化を言い出し、結局、何の効果も得られませんでした。

 

文在寅大統領は、南北関係改善(韓国基準)のために日本を『用』しようとしました。失敗しました。尹錫悦大統領は、日本との関係改善(韓国基準)のために南北関係を『用』しようとしています。いまのところ、成功しているとはとても言えません。

それに、これ前にも書きましたが・・このグランドバーゲン、『一括交渉』という意味ですが、韓国側は何か長引きそうな案件があると、すぐに『一括妥結』を言い出します。最近もそうですが、米朝関係においても、日韓関係においても、韓国がすぐに『首脳会談で一括解決するしかない』と主張をします。まるで、『王』が決めればそれでなんとかなると思っているようです。そういう考えと、今回のグランドバーゲン主張も、何も変わっていません。

 

それに、この表現はユン氏のオリジナルでもありません。李明博氏が2009年に使って、あまり話題になりませんでした。あのときも北朝鮮関連で、2009年9月22日MBNの記事によりますと、<<米国ニューヨークを訪問中の李明博大統領が「北朝鮮の核、グランドバーゲン」を推進しなければならないと明らかにしました。北朝鮮が核を放棄するとともに、一括して具体的で実質的な支援をするということです。米国ニューヨークを訪問中の李明博大統領が、北朝鮮の核の完全な廃棄と同時に、具体的な支援をする一括妥結原則「グランドバーゲン(Grand Bargain)を提案しました・・>>、と。

「この単語、ぴったりだ!」と思って言ったかもしれませんが・・それから米国及び関連国側から「事前に何も聞いてない」「なんのことだ」という反応しか得られず、それからはあまり耳にすることもありませんでした。

 

 

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