韓国政府の現金化『意見書』、その意味と限界は・・民官協議会は15日間も開かれず

韓国外交部(外務省)が、最高裁に『政府が外交的に努力中である』という意見書を提出しました。事実上、最終決定(現金化の実行)を延期してほしい、という意図になります。しかし、その意見書で『努力』の具体例としている『民官協議体(協議会)』が、2回の会議を行ったもののこれといった進展は無く、それから15日間も開かれず、外交部から参加者(専門家、原告側など)に何の連絡もなかった、とのことです。合わせてお伝えしたいと思います。意見書の件は、日本でも各メディアが報じているので、一応、NHKの記事をリンクします。引用はしておりませんが。

メディアにもよりますが、『早ければ8月中ではないのか』とされている、現金化の大法院(最高裁)決定。政府(外交部)がわざわざ「合理的な解決策を見つけるため、多角的な努力をしている」とする内容の意見書を提出したのは、やはり『もう少し待て』という意図でしょう。解決策を用意するから、でもまだ用意できてないから、『保留(延期)』してくれ、と。この意見書で主張している『多角的な努力』は、少なくとも日韓メディアの記事で公開されているのは、二つだけです。一つは国内でのことで、外交部が主催している、官民(韓国では民官と書きます)協議会です。原告や専門家の意見を取りまとめるため民官協議会を構成した、と。もう一つは、具体的なことは書いてありませんが、国外的なもの、「日韓の間で外交として協議中である」です。

 

この件、一つだけ肯定的に捉えられる部分があります。それは、いままで、主に文在寅政権で主張してきた、『裁判所がやったことだから、政府にできることはなにもない』というスタンスを崩したことです。韓国政府という立場からすると、この部分がもっとも重要なはずですが、なぜか日韓ともに、記事でこの点を取り上げたものはそう無い気がします。私が読んでないだけかもしれませんが。最近、「日本側の主張に同意する」のはまだ無いものの、「いままでの韓国側の主張が崩れてきた」現象が目立ちます。

この前、外交部長官が「現金化の前に解決策を用意する」と公言、日韓外相会談でも確認したことが、一例でありましょう。いままでは、現金化の前に解決策を用意することそれ自体に、応じていませんでした。ただ、『韓国が用意する』とは言ってないのがポイントだったりします。まだそこまでは達していない、ということでしょう。これは、ユンソンニョル大統領がNATO首脳会議から帰国する飛行機の中で『懸案の解決を前提にしてはならない』と話してから2~3週間しか経ってない時点でのことで、尹政権がかなり焦っている、追い込まれていることを表しています。

 

このように、少しずつではありますが、揺れてきた韓国側のスタンス。今回の意見書により、『政府にできることはない』も、もう主張できなくなりました。日本から見ると、あまりにも微妙な動きなので、これを進展というのもなんですが、確かに何かが揺れているのは確か(前で進めているかどうかは分からないけど、揺れているのは確か)です。

しかし、珍しく肯定的なことから書きましたが(笑)、問題もあります。それは、意見書に書いてある二つのこと、国内・国外での努力とやらが、うまく行っていないことです。そう、「協議会も日韓の外交も、協議中といっても、何の進展もないじゃないか」と言ってしまえば、それだけです。後者(日韓の外交で協議中)は、長く書くこともないでしょう。毎日ブログ書いている私としては「訪日したりしたから『協議している』というのは事実だけど、進展はこれといってないのでは」としか思えません。また、前者、すなわち民官協議会のことですが、7月14日に2回目の会議を開いてから、ソース記事の取材の時点で15日間も、外交部からは何の連絡もなかった、とのことでして(ソウル経済)。意見書の法的根拠についても記述があるので、合わせて引用したいと思います。以下、<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・外交部が言及した最高裁判所の民事訴訟規則(※意見書の法的根拠)とは、「国家機関と地方自治体は、公益に関する事項に関して、最高裁判所に裁判に関する意見書を提出することができ、最高裁判所は彼らに意見書を提出するようにすることができる」という条項だ。外交部が現金化関連で最高裁判所に意見書を提出したのは、2016年以降、初めてだ。ジン・チャンス世宗研究所日本研究センター長は、「政府が問題解決のために全方位的に努力している、ということ」とし「政府がとっくにやるべきことだったのに、いままでやらなかったのが問題」とした。

こうした中、政府が被害者の意見の受け入れなど、現金化解決のための手続きを、より精巧にしなければならないという指摘が出ている。政府が、原告側だけでなく、学界・法曹界・経済界の意見を受け入れるため今月初めに発足した民官協議会は、14日の2次会議以後、この日までに半月以上も何の動きが無いためだ。民官協議会に参加してきたある人物は、「二次会議以後、今日まで外交部から何の連絡も受けられなかった」とし「民官協議会をもっと積極的に開かなければならないのに、残念だ」と伝えた。彼はまた「参加を拒否した一部の原告側に対しても、長官・次官が会うなど、より積極的な『求愛』の姿を見せなければならないだろう」と指摘した(ソウル経済)・・>>

 

その2回の会議でも、「専門家たちは特に、被◯者側が言及した『日本企業との直接交渉』要求は、実現可能性が低いと見ている。当事者である彼らがこの立場を固守すれば、協議会に出来ることはないという意味だ」、「なんとか意見を一つに集められたとしても、日本企業と政府が応じる可能性は低い」、「協議会は、きちんとした権威ある機構でもない。彼らの決定に基づいてことを進めて、その結果に対して責任を取ろうとする人はいないだろう」などと言われています(7月6日の韓国日報より)。さて、こんな中、意見書は効果を出すのか。出したところで、『延期』以外の意味があるのが。繰り返しになりますが、個人的に、「政府に出来ることはない」が崩れただけでも、評価できる部分はあると思います(各メディアの記事において、この見方はまったく出てきませんが)。しかし、それは韓国内でのこと。日本側としては、結果を見て判断すれば(いわゆる『採点』すれば)それでいいだけでしょう。焦っているのは、日本ではありませんから。

 

 

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