韓国大統領室「今月中にTHAAD運用正常化」・・しかし、現状、難易度はかなりのもの

韓国大統領室が、今月中に、すでに『ソンジュ』地域に配置済みのTHAAD基地の運用を正常化すると話しました。尹錫悦(ユンソンニョル)政権が示してきた対中スタンスにしては、珍しいと言えるでしょう。しかし、相変わらず、「『時限』を自分で決めてしまった」ことは、かなりの負担になるのではないか、そんな気もします。普通に「出来る限り早く正常化する」とすればいいものを、なんで自分で時限を付けてしまったのか。その時限内にクリアー出来なかった場合、なにをどう話すのか。そんなところが問題でして。

もちろん、ある程度手続きが進んで、思ったより時間がちょっと足りなかった、そういうことなら問題ないでしょう。しかし、今月中に何か目に見えるほどの進展が無いと、どうなるのか、『外』、すなわち米中の目には、『正常化しようとしても、出来ないんだな、この人』と映ることでしょう。中韓外相会談の後に発表された中国側の発言やブリーフィング資料などが、思ったより強烈だったから、「行動で反論しないと」と思ったのなら、それでいいかもしれません。しかし、もし、「今回は、米国に怒られないようにしないと」と思って、急いで何かを示すために時限を決めたのなら、それは失策です(こちらのほうが正解のような気がしてなりません)。

 

この点、結果を見なければなんとも言えませんし、ちゃんとできるなら、それはそれでいいでしょう。少なくとも、本ブログでネタにするようなことではありません。ですが・・状況が思わしくありません。さっそく、与党は前政権(文在寅政権)に責任を取れと言い出しました(中央日報)、野党は「もっと賢明に対処せよ」としています(SBS)。引用はしませんが聯合ニュースなど複数のメディアによると、THAAD基地があるソンジュ地域では、市民団体が強く反発しています。この状況において、20%台支持率のユン政権が、何をどこまでできるのでしょうか。それに、正常化のためには『市民団体も参加した』委員会による環境影響評価が必要ですが、7月時点で、それが出来ないでいます。今月末までやるとして、それ、法律的には問題ないのか。以下、各紙、<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・キム・ギヒョン「国民の力」議員は12日、「文在寅政権が2017年10月、韓中サード葛藤を縫合するとし「3不1限」政策を示したという中国の主張が事実なら、大韓民国の軍事安保主権を自らあきらめたことになる」とし「文在寅(ムン・ジェイン)前大統領は一体何をしてしまったのか」と話した・・・・彼は「文前大統領と当時外交安保責任者たちは、今からでも、隠しておいた真実が何なのかを明らかにしなければならない」、「関係当局は、サード配置をめぐる文政権の行動について徹底した真相 調査をして責任者に責任を問わなければならない」と要求した(中央日報)・・>>

<<・・共に民主党のウ・サンホ緊急対策委員長は、今日(12日)午前、国会で開かれた非対委会議で、昨日大統領室がソンジュ駐韓米軍サード(THAAD・高高度ミサイル防衛システム)基地を今月末に正常化すと明らかにしたことについて、「なぜまた騒ぎを大きくするのか」と批判しました。ウ委員長は、「いわゆる3不1限政策を大韓民国が宣誓したとするた中国外交部の発表も適切ではないが、これに反応してサード運営を正常化するという尹政権のアプローチも望ましいももには見えない」と主張しました。彼は、「政府レベルで全体的な国政運営マニュアルとアイテムを点検してほしい」とし「この件に触れれば、国内で葛藤が始まり、地域住民たちが反発し、複雑になることが日を見るより明らかではないか。この問題はもっと落ち着いた対応をしてほしい」と促しました(SBS)・・>>

 

繰り返しになりますが、『結果を見なければ』なんとも言えません。ちゃんとできるなら、それでいいでしょう。でも、前にも引用したことがありますが、7月7日のKBSの報道によると、基地正常化のスタートラインとなる『関連協議会の構成』そのものが、まだ出来ないでいます。 <<・・駐韓米軍の高高度もミサイル防御体系、サード(THAAD)配置の件で、葛藤が再び大きくなっています。政府が、慶尚北道(キョンサンブクド)星州(ソンジュ)にサードを正式配置するとし、環境影響評価作業に入ると、反対の声が再び高まっています(※現在は臨時配置ということになっています。5月、米韓首脳会談の頃から正常化するという発表はありました)。

住民と市民団体など40人余りがソンジュの郡庁前に集まりました。国防部が駐韓米軍の高高度ミサイル防御体系サードを正式配置すると明らかにし、「環境影響評価」作業に着手するとしたためです。環境影響評価を推進するためには、公務員や専門家など10人規模の協議会が構成されなければならず、ここには住民代表が必ず含まれなければなりません。しかし、市民団体は中断を求める声が高く、環境影響評価作業は4年経っても進んでいません(KBS)・・>>

 

これ、手続きをちゃんとしておかないと、ほぼ間違いなく、違法だのなんだのと、あとで騒ぎになります。いや、ちゃんとしても騒ぎにはなるでしょうけど(苦笑)。文政権で、市民団体の影響力強化のため、いろいろな委員会に「市民の代表」とやらの参加を義務付けておいたと聞きます。その影響もあるでしょうけど、前の政権が作ったからといって手続きだからってスルーするわけにもいかないでしょう、普通。現状からして、「今月中の正常化」発表は、急ぎすぎたのではないでしょうか。それが、中国に向けたアクションなのか、米国に向けたアクションなのかは分かりませんが。候補だったときに主張していた「追加配置」公約は、いつのまにか無かったことにした尹大統領。米韓首脳会談の頃から話していた既存基地の正常化だけでも、本当にできるのでしょうか。

 

 

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