韓国大手紙「これが同盟国に対する待遇なのか」・・政権交代3ヶ月で完全に反転した雰囲気、韓国に広がる米国への失望感

経緯は一つ前のエントリーに書きましたが、米国に対する韓国内マスコミの論調が、完全に変わりました。米国への失望感、とでも言いましょうか。個人的に、尹錫悦(ユンソンニョル)政権は、国際情勢、というか西側の国という自覚という面においても、スタンスの確立ができていませんでした。にもかかわらず、右側と中道メディアは『もう完全に米国側に舵をきった』と、左側もまた『そ、それはそうだが、中国との関係をもっと重視すべきではないのか』と、妙な論調が主流でした。そのような、各メディアの現状把握にも問題があったわけですが、そういう指摘はどこにもありません。

電気車、半導体などで始まった、「『経済安保』を主張するバイデン政権と、『経済は中国、安保は米国』を主張するユン政権」の主張の溝は、米韓同盟そのものへの問題として、強くなるばかりです。ユン政権がスタートして、米韓首脳会談があって、それから約3ヶ月。米韓関係に対する国内マスコミの論調も、真逆になりつつあります。中央日報チャンネルAなど、右側とされる大手メディアも例外ではありません。チャンネルAは、企業投資関連で『韓国への投資を、米国に取られてしまった』という記事をスクープし、中央日報は、これはもう同盟国としてふさわしいのかどうかの問題だ、同盟関係が揺れている、という主張を展開しました。以下、各紙、<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・米国が韓国に投資しようとしていた台湾半導体企業まで説得し、米国に誘致した事実が明らかになり、議論が起きています。米国で私たちの電気自動車をサベ◯するという議論により(※◯はツです)政府も緊急事態になっている状況で、同盟国の半導体投資まで米国に取られてしまったという声が出ています・・・・台湾の半導体部品メーカー、グローバルウェイファーズは6月末に、50億ドル、約7兆ウォン規模の米国投資を決定しました。

当初、韓国に工場を増設しようとしましたが、投資先を米国にしたのです。このような決定の背景には、レモンド米商務長官の電話説得があったという事実が、遅れて知られました。「補助金がないなら、韓国に新しい工場を建てるほうがいい」とするグローバルウェイファーズのドリス・スー代表に、レモンド長官は「ちゃんと計算してみるといい」と言って、大きな支援を約束した、ということです。ウォールストリートジャーナルとのインタビューでこのような事実を公開したレモンド長官は、「米国が核心鉱物、電気自動車バッテリー、半導体、人工知能などをコントロールしなければならない」と強調しました。私たちの企業には米国投資を奨励してきたバイデン政権が、韓国への投資もやめさせてしまったわけです(チャンネルA)・・>>

 

昨日も同じ趣旨の文章を書いた記憶がありますが、このレモンド長官のWSJとのインタビュー、ユン政権が派遣した代表団が、電気自動車及び半導体関連の中国投資など、米国ですでに議会を通過した法案の修正を要請するため、訪米したタイミングと、ほぼ一致します。しかも、長官クラスが公開的に国名を明らかにしたのも、異例と言えるでしょう。ちょうど二日前、『各国が、ユン政権に関する戦略的判断を見直しつつある』というワシントン特派員の記事をエントリーしたこともあって、このレモンド長官の発言は、『陣営』単位で分けているのではないか、そんな気もします。米国主導といっても基本的には対中政策のことだし、普通なら『他国』と言ってしまえばそれでよかったのでは。

 

一部のメディアは、このように一気に揺れいている(本当は一気でもなんでもなく、ユン政権が『事前の話し合い』が可能な手段を持っていなかっただけでしょうけど)両国関係において、『北朝鮮問題など、米韓同盟にも影響するぞ』と主張しています。「北朝鮮問題に積極的に関わるから、中国関連問題で例外を認めてほしい」というのが、ユン政権の基本外交でした。メディアもまた、この期に及んで、「これなら、北朝鮮問題で協力しないぞ」という話を出せばいいと思っているのでしょうか。チップ4も、IPEFも、米韓同盟も、ユン政権が『カードとして使える』としているものは、それらすべてが『自らの国益のために選んだもの』です。いまそこから離れて、どこへ行くといいのでしょうか。「逆サイドに行けばいい」と思っていないかぎり、できない発想です。続けて、引用してみます。

 

<<・・途方もない社会的費用を払った韓米FTAの遵守を / 価値同盟を守ろうとする我が国を、米国は正当に扱わなければならない(※見出し)。 韓米両国政府が、米国の韓国産電気サベ◯を解決するための協議チャネルを稼働することにした。米国貿易代表部(USTR)と通商交渉本部との間に米国のインフレ抑止法施行で、補助金支給対象にならなかった問題を解決するための、公式手続きが始まった。米国の電気車サベ◯は、明らかに韓米自由貿易協定(FTA)に反する。補助金などで相手国を不利に扱わないという条項がある。通常、当局はこの点を堂々と指摘し、是正を主張しなければならない。

韓国は韓米FTA交渉と再交渉、国会批准をめぐって、途方もない社会的費用を払った。2006年、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権が交渉を始め、5年9カ月も経って李明博(イミョンバク)政権の時、国会を通過した。当時野党だった民主統合党(現『共に民主党』)の反発で、国会常任委会議場などではハンマーが登場したりもした。韓米FTAは一つの協定を越えて、世界に向かう通商と開放国に生まれ変わる過程だった。明らかにFTAを遵守しない米国を、放っておくわけにはいかない理由だ・・

 

・・ユン政権で復元した韓米同盟の基盤が揺れる可能性もある。去る5月、韓米首脳会談で両国は安保・経済同盟から技術・価値まで共有する「グローバル戦略同盟」に韓米同盟がアップグレードされたと宣言した。主要貿易パートナーである中国の反発があったにもかかわらず、インド・太平洋経済フレームワーク(IPEF)に参加し、韓国の大企業は先を争って米国現地に大規模投資をすると発表し、今年の米国雇用に最も寄与した。対米投資だけで3万5000の雇用を米国にプレゼントした。米国が、価値同盟国、雇用ヘルパー1位の国の企業の後頭部をたたいたわけだ(中央日報)・・>>

 

このように、謎のキャラ「サベ丸」くんが大活躍している今日この頃です。途中にオチを書いてしまいましたが・・IPEFもFTAも、結局は国益に役立つと加入したものでしょう。当時、「~に加入すれば~ほどのプラス要因がある」とする記事がかなり目立っていましたし、IPEFのときは多くのメディアが『加入しないという選択はない』とまで書いていました。なのに、まるで、他人のために加入して・あ・げ・た・のような論調になっています。引用部分にもプレゼントという言葉が出てきますが、すべて同じ見方が可能でしょう。呆れたものです。というか、国家間条約にそこまで遵守を強調するなら、その前に隣国のことでやることがあるでしょうが・・・・・って、あ、大事な告知がありました。明日(10日、土曜)は、更新がありません。次の更新は、11日(日曜)のいつもの時間になります。皆様、良き週末を。

 

 

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