韓国中央銀行、米韓通貨スワップは『Fed側の条件が満たされていない』と認める・・当局の発表とは大いに異なる内容

一時よりは為替レートも安定していますが、まだまだ米韓通貨スワップに関する話題が続いています。そんな中、政府(当局)と韓国銀行(中央銀行)の見解の差が、浮き彫りになっています。まずは当局の反応ですが、基本的に『やろうとすればすぐにでも締結可能だ』というニュアンスで話しています。ファイナンシャルニュースの記事によると、先月末、大統領室は『米国バイデン行政部は、米韓通貨スワップ実行において確かな意志を持っている』と発表しました。

この前、本当は外交部がするはずの『快く首脳会談に合意した』などの発表を行ったのも、大統領室でした。この9月29日の発表内容も、担当部署は別にあるし、そもそもなんで『バイデン行政部』が意志を持っていると話したのか(Fed担当です)、いろいろ不自然なこともありました。話が出てきたのは、安倍元総理の国葬に参加し、帰りに訪韓したハリス副大統領と、尹大統領の面談です。その際、米国側の発表内容にはこれといったものがありませんでしたが、大統領室関係者が書くメディアに「ここでいう『協力』には、通貨スワップを含めてある」と強調しながら、相応の趣旨を話しました。以下、各紙、<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・韓国と米国間の、グローバル景気低迷を克服するための案の一つである「韓米通貨スワップ」措置を含む金融共助が、徐々に具体化しつつある。尹錫悦(ユンソンニョル)大統領とカマラ・ハリス米国副大統領が29日午前、ソウルヨンサン庁舎で会い、米国インフレ抑止法の緩和と通貨スワップを含む金融流動性供給装置協力について、再確認した。韓国銀行とFed米国連邦準備制度が積極的に情報を交換していることに言及しながら、最近の高為替レート基調に対する対応を示唆した・・・・大統領室の高位関係者も記者たちに「通貨スワップとして認識できる流動性協力と関連した水面下での調整後、ニューヨークで韓米首脳間で協議するという話があった」とし「今日(9月29日)ハリス副大統領を通じて実質的に(通貨スワップを含む流動性供給を)履行するという米政府の意志を再確認したのだ」と説明した(ファイナンシャルニュース)・・>>

ニューヨークで、というのは・・あの48秒のことでしょうか。できたならそれはそれで(スピード的に)すごいことですが。ですが、与党の国会議員が韓国銀行の資料を分析した結果、そもそもFedが『世界的に、通貨スワップが必要な状況なのか』を判断する前提条件そのものが、満たされていないことが分かりました。韓国経済の記事ですが、内容をまとめると、そもそも通貨スワップは韓国『だけ』が締結するわけではないので、米国としては世界的に前提条件が合っているのかどうかで判断するしかない、こんな状況下で『いつでも締結できる』ようなニュアンスで話す理由はなにか、というのです。大統領室が『通貨スワップできるもん』としているのに、与党議員がここまで牽制するのも珍しい話です。

 

<<・・米国の基準金利引き上げで為替レートが急激に変動している中、時期によっては1ドル当たり1440ウォンを超えるなど、韓米通貨スワップに対する要求が高まっている。外国為替当局は米国と対話していると明らかにしているものの、いざ米国中央銀行(Fed)の通貨スワップ判断要件が満たされていないことが分かった。ソン・オンソク国民の力議員が韓国銀行から受けた資料によると、Fedは通貨スワップの前提条件として、グローバルにおいてのドル市場の流動性が梗塞しているかどうかを挙げる。韓国銀行は「Fedは通貨スワップを検討する際、各国の為替レートではなく、外国為替の取引が行われる銀行間のドル資金市場の流動性状況に注目する」と説明した。

これを判断する代表的な指標は「リボ・OISスプレッド」だ。ロンドン銀行間融資金利であるリボ金利と、満期が1日間だけの初短期金利であるOIS金利間の差だ。差が広がるほど、市場内の流動性が不足することを意味する・・(※などの条件において、いま全世界的にドルが高くなってはいるものの、流動性に大きな問題が発生しているわけではない、とする内容の後に)・・韓国銀行も「流動性判断指標に基づいた時、現在の世界的な『強ドル』現象による為替レートの上昇はあるものの、ドル資金市場の流動性はまだ良好だ」とし、「いままでFedが通貨スワップを実行した時期とは状況が異なる」と説明した(韓国経済)・・>>

 

記事に直接書いてあるわけではありませんが、内容的に、『世界規模で判断するものであるため、米韓の間だけで通貨スワップを行うことはありえないし、グローバル的に通貨スワップを行う状態ではない』というのです。ソン議員は「急速に増えた家計負債もあって、金利引き上げで対応するには限界がある」、「今は、韓米通貨スワップ締結さえ容易ではないなど、外国為替当局が使える政策はそう多くないのでは」と指摘した、とのことです。こちらも直接的に言っているわけではありませんが、大統領室の発表に疑問を提起しているのでしょう。

引用部分では『家計負債』を取り上げていますし、実際、それは大きな問題です。しかし、企業のほうも同じです。こちらはマネートゥデイの記事ですが、後1回(0.25%)韓国銀行が基準金利を引き上げると、大企業の約半分が『営業利益で負債の利子も払えない』状態になるという調査結果がありました。もちろん各社ごとに事情はいろいろ異なるでしょうけど、容易に金利引き上げができる状態とは言えないでしょう。

 

<<・・今月12日に予定された韓国銀行金融通貨委員会で、基準金利を0.25%p引き上げるだけでも、大企業の半分が営業利益で利子費用も充当できなくなるという調査結果が出た。全国経済人連合会(以下全経連)が市場調査専門機関『モノリサーチ』に依頼して、売上順位で1000大企業のうち、製造業を営む企業を対象(100社の回答)にして資金事情を調査し​​た結果、営業利益で利子費用が払える基準金利レベルは、平均2.6%であった。現在、基準金利が2.5%なので、1回だけでも基準金利を引き上げると、相当数の企業が流動性圧迫にさらされる可能性があるわけだ・・・・大企業10社のうち3社以上(37.0%)は、すでに現在の基準金利(2.5%)でも営業利益で利子費用が充当出来ない状態でもある。もし基準金利が2.75%(0.25%引き上げ)になると、大企業の50.0%が同じ境遇となる。もし基準金利が3.0%まで上げれば、59.0%になる(マネートゥデイ)・・>>

 

 

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