韓国、各企業の資金流動性問題が深刻化・・金利の急な上昇、マンションの売れ残りなどで、一部建設会社の資金流動性危機が報じられる

複数のメディア、朝鮮日報や中央日報のような保守側のメディアもまた、社債関連で『ドン脈硬化』が起きているという記事を出しています。韓国語の表記は「~N」と「~NG」表記を区別しています(普通の会話ではあまり区別されていない気もしますが)ので表記はちょっと違いますが、動の読みは「dong(ドン)」で、お金を意味する固有語は「don(ドン)」になります。だから、資金関連の流動性に問題が起きたとき、「ドン脈硬化」という言葉を使ったりします。お金の脈が硬化した、という意味になります。個人的に、疾患の名前をこんな風に使うのは好きではありませんので、以下、「資金流動性問題」などとします。

一つ前のエントリーでも同じ内容を書きましたが、今年の初頭頃、日本円のことで、多くのメディアが「円は無用」「通貨価値こそが国の権威である」などの記事を載せました。しかし、それからウォン安が著しくなり、尹政権が始まってからは『米国との首脳会談で通貨スワップを最優先議題にすべきだ』という主張まで出てくるようになりました。それから円安関連記事も少なくなりましたが(無くなったわけではありません)、今思えば、それは『実はウォン安が問題になりそうだから、円安記事を出そう』という妙な心理によるものではなかっただろうか、そういう気もします。せめて、「『マニュアル』によるもの」ではなかったと思いたいところです。

 

最近、また円安関連記事が増えて、日本に金融危機が来るとか、そんな主張も聞こえるようになりました。でも、それもまた、『円をウォンに変えてみると』成立する、または成立しそうな話を書いているだけではないのか。心理かマニュアルかは分かりませんが、そんな気がしてなりません。2年前の一つ前の債務主導成長というものを取り上げたのも、そのためです。実は、現象がどうなっているのかは1~2年前から分かっていて、だから円が~と記事を載せるしかないのではないか・・そんな気がしたからですが・・そういう曇った心で記事をチェックしていたら、各紙から、また資金流動性の話が出ていました。

韓国では、もっとも信用等級が高い社債を「AAA」と言います。そのAAAの韓国電力公社が、利回り5.7%と5.9%で2年・3年もの債券約4000億ウォンを発行しました。ですが、その中の約1200億ウォンが、取り引きが成立しなかった、とのことでして(中央日報より)。ちなみに韓電というと、前からもっとも信用できる会社として有名です。その韓電が、AAAより低い「AA-」よりも高い利子で債券を出したわけですが・・それが完売できなかった、他にも、同じAAAの道路公社が出した約1000億ウォンの2年もの債券は全額が売買不成立(買い手が付かず)となりました。グァチョン地域の都市公社もまた、地方自治体傘下のAA級公企業なのに、利回り6.2%、600億ウォン分が『全額』成立せず。記事によると、6日前には同一の債券が5.421%で取引されていた、とのことでして。

 

1週間前より0.75%を上乗せしたのに、全額が取り引き成立せず。確かに硬くはなっているようですね。はてさて、ここでやはり気になるのは、建設部門です。特に、プロジェクト・ファイナンスにすべてをかけている企業が多い中、第2金融圏(貯蓄銀行など)も貸出の条件を強化しつつある、とのことでして。プロジェクト・ファイナンスとは、マンション団地の建設などにおいて、『実物』ではなく、『事業』を担保にして貸し出しを受けたという意味です。これから建設を開始しますので、この事業自体を担保にして融資を許可してほしい、といったところですね。マネートゥデイはこの件で、『(特に)建設会社においては資金流動性が最悪の状況を迎えており、金利急騰などで不動産市場そのものが凍りついているのに、資金市場まで凍った。不動産PF(プロジェクトファイナンシング)分の満期に耐えられない建設会社が、一つ、また一つ出てくる』とし、次のように報じています。

 

特に気になるのは、「一部の建設会社は、「分譲率が40%を超えたら工事費を完納する」を条件として提示する場合が増えた、という部分です。マンション団地などの建設プロジェクトを施行する主体(施行会社)から、『売れ残った分』の工事費は受け取ることができない、とのことでして。だから、4割ぐらい売れたら、100%分の工事費を支給してくれ、というのです。工事を始める前に『分譲権』というものを販売します。普通は、買おうとする人が多いので(記事本文では数十対一の競争率は普通だった、とも)、多くの場合は抽選です。この分譲権、いわば『買うことができる権利』をプレミアムつけて販売する人も大勢います。最初からマンションを買う気なんかなかった、といったところでしょう。でも、もう作っても売れないものが多いので、4割売れれば全額くれ、という条件を出すしかなかった、と。というか、これ、普通は工事が終わったときに何かの形で支払うものでは・・な気もしますが。以下、<<~>>が引用部分となります。

<<・・業界では「そろそろ始まるのか」という懸念が大きくなっている。A建設、B建設、C建設会社の危機説が相次いでいる。20日、関連業界によると、ソウルの中堅建設会社であるA総合建設会社が、満期が到来する500億ウォンに耐えられず、近いうちに債務不履行状態になるという話が公然と出ている。業界の関係者は「資金調達の術がすべて詰まって、色んなところから20億、30億ウォン単位で調達しているが、もうそれも容易ではないと聞いている」と話した。A建設会社だけではない。業界では同じ可能性が大きいとされているB建設会社、C建設会社の名前などが噂になっている。業界関係者は、「会議の時に、そのような可能性が高い建設会社の名が言及されたりするが、それらは新しく追加されるばかりだ」とし、「該当企業とは事業を一緒にしてはならないという、一種の警報である」と説明した・・

 

・・大型建設会社も、資金循環に苦労しているのは同じだ。ロッテ建設は18日、2000億ウォンの有償増資、20日には5000億ウォンの短期借入をそれぞれ公示した。会社側は、景気低迷に備えて、あらかじめ運営資金を確保しただけだと説明した。最近、金利引き上げの余波で不動産市場が萎縮し、地方事業所では「竣工後で未分譲のまま」の物量が累積しつつある。年内、忠清南道の天安市で分譲を準備中の、あろ中堅建設会社の関係者は、「内部検討の結果、現時点では初期分譲率が10%にも及ばない可能性があるという意見もある」とし「今は問題はないとしても、2~3年後の竣工時点まで未分譲が解消されなければ、資金の圧迫が大きくなるだろう」と話した。

このような理由で最近、一部の建設会社は、施工契約を結ぶ際に「分譲率40%」を工事費完納条件として提示する場合もある。未分譲の長期化すると、施行会社側から工事費が受けられなくなるので、そんな状況を避けるためだ。新築マンションも平均で数十対一の競争率を示した昨年とは全く変わった気流だ。金利が急に高くなり、収益性も落ちて、そもそも着工が難しくなったという危機感も膨らむ。ある中小建設会社の関係者は、「最近、土地買取のためのブリッジ・ローンや、事業進行のためのPF(プロジェクトファイナンシング)金利が10%台まで上がった。当分の間、事業は延期するしかないという意見も出ている」と述べた(マネートゥデイ)・・>>

 

 

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