中韓首脳会談、北朝鮮問題で明らかな異見・・尹大統領「中国が相応の役割を」 / 習首席「韓国が南北関係の改善を」

昨日、G20開催都市であるインドネシアのバリで、尹錫悦(ユンソンニョル)大統領と習近平首席の中韓首脳会談がありました。なんで「かんちゅう」では変換できませんか・・というのはともかくして、会談の内容がいままでとはかなり違うものでした。文在寅大統領も任期中に2回中韓首脳会談しましたが、基本的には中国側の動き(いわゆる『中国の夢』など)に足並みを揃えていくというものでした。しかし、今回は、明らかに日米韓、日米、日韓、米韓と続いた首脳会談の延長線。

就任後中国に対してあいまいな路線を続けてきた尹政権ではありますが、さすがに文在寅大統領のようなことは言えない、そんな流れの中での会談となりました。ですが、だからこそ「イベント」としての会談になると中国側も分かっていたのでしょうか。北朝鮮以外はこれといった議題もなく、しかも明らかに立場が違うと確認し合うだけの会談になりました。会談時間は25分。数日前に続いた各首脳会談に比べると、半分ぐらいです。

 

会談の内容は、大半はマニュアル的な内容です。「今まで共同の利益のために頑張ってきたし、これからもそうして行きましょう、それは本当にいい話ですね、そうですともそうですとも」。共同声明はなく、東亜日報が「会談結果発表文」全文を載せていますが、読んでみると、大まかにこんな感じです。議題と言えるものは、北朝鮮問題だけでした。ASEANから続いた首脳会談シリーズがこのためのものだったと言ってもいいでしょうし、この件が議題にならないはずはないでしょう。でも、中国側からは、『南北関係』という話は出ましたが、北朝鮮関連の安保問題についての言及はありませんでした(※下のほうに中韓首脳会談結果発表分の全文(の個人的な日本語訳)を<<~>>で引用しました。参考にしてください)。

そして、その解決策についても、両方、違う見解を示しました。尹大統領は北朝鮮の核・ミサイルなど安保関連のリスクを指摘し、習近平首席にこう話しました。「安保理常任理事国であり、隣接国として、中国がさらに積極的で建設的な役割を果たしてくれることを期待する」。しかし、習主席は、「中韓両国が朝鮮半島問題に共同利益を持つ」としながらも、「平和を守護しなければならず、韓国が南北関係を積極的に改善していくことを希望する」と話しました。

 

日本との何かの会談において、韓国はいつも「日本『も』呼応を」という表現を使います。呼応を、努力を、などなど。パッと聞くだけなら、「両方が頑張ろうと言っているから別にいいのでは」と思われるかもしれませんが、実は、案件そのものが国家間の条約に関わるものであるため、『も』が入る時点で、日本側の核心主張が無効となってしまいます。拙著でもブログでも、この『も』を何度も取り上げてきました。今回の中韓首脳会談で、習近平首席が話した内容が、その『も』に似ていると、私は思っています。

関係改善にもいろいろと方向性があると思いますが、少なくともここで習首席が話す関係改善は、文在寅政権のときに『現状でできることはほぼ全て』やってみました。それ以上やると、米韓関係が維持できなくなります。ある意味、その結果が北朝鮮リスクの現状だと見ることもできます。にもかかわらず、その核心内容と相反する『も』を言い出したわけです。「平和は大事ですよね。前政権の路線に戻ったらどうですか?」と言ったと見てもいいでしょう。

 

尹大統領、インド太平洋関連でいろいろ話したこともあって、それ関連でも何か言うのではないかとも思われましたが、これ以上の内容はありませんでした。他に、これまた本ブログでも紹介したことがありますが、非核化の前の時点でも大規模支援を行うという趣旨の、尹大統領の北朝鮮政策『大胆な構想』。すでにその構想は『なんだったのか、あれ』状態ですが、習主席はそれをわざわざ掘り起こし、「積極的に支持する」「北朝鮮の意向がカギだ」「北朝鮮が呼応するかどうかにかかっている」などで、方向性はいいけど北朝鮮との話し合いを重視せよというニュアンスでした。

そして、いつものこと、「訪韓しましょうか。訪韓してほしいですか。やはりそうですか」作戦は今回も健在でした。「新型コロナなどで韓国を訪問できなかったが、ある程度安定すればユン大統領の訪韓招待に喜んで応える」、「相互便利な時期にユン大統領が中国を訪問してくれることを希望する」、と。ちなみに、岸田総理との日中首脳会談は17日に予定されています。 ワクチン接種(4回目)などいくつかの用事が重なって、今日の更新はこれで終わりです。次の更新は、明日の11時前後となります。

 

 

<<尹錫悦大統領は今回のG20首脳会議出席を契機に11月15日(火)(現地時間)、習近平中国国家主席と就任後最初の対面首脳会談を行い、韓中関係発展方向、朝鮮半島問題、域内・グローバル情勢など相互関心事について議論しました。 両首脳は、韓中両国の交流と協力が1992年の修交以来、飛躍的に成長してきたことを評価し、修交30周年を迎え、両国関係を相互尊重と好恵、共同利益に基づいてさらに成熟に発展させていくことに立場を共にしました。

特に、尹大統領は普遍的価値と規範に基づいて国際社会の自由・平和・繁栄を追求することが韓国政府の外交目標だとし、東アジアと国際社会の自由・平和・繁栄を促進する上で中国の役割が極めて大切なだけに、韓中両国が緊密にコミュニケーションして協力していこうとしました。パンデミック、グローバル景気低迷、気候変動などの複合的な問題を共に克服するため、韓中両国間の高位級対話を定例的に活発に推進していこうとしました。また、両首脳は、韓中FTA第2段階交渉を早急に仕上げようという意見を共にしました。

 

習近平主席は高位級対話の活性化に共感を表し、韓中両国間の1.5トラック対話システムも構築しようと提案しながら、両国間のコミュニケーションを拡大し、政治的信頼を築いていこうとしました。また、尹大統領は民間交流、特に若い世代間交流を拡大し、お互いの歴史と文化を深く理解することが重要だとし、習近平主席も韓中国民間の人的・文化交流に開放的姿勢を持っているとし、様々な分野で交流とコミュニケーションがなされるよう努力しようとしました。

尹大統領は最近、北朝鮮が前例のない頻度で挑発を続け、核・ミサイルリスクを高めていると指摘し、安保理常任理事国であり、隣接国として中国がさらに積極的で建設的な役割を果たしてくれることを期待すると言いました。習主席は韓中両国が朝鮮半島問題に共同利益を持つとし、平和を守護しなければならず、韓国が南北関係を積極的に改善していくことを希望すると言いました。

習主席は、私たちの大胆な構想について、北朝鮮の意向がカギだとし、北朝鮮が呼応してきたら、大胆な構想がうまく履行されるように積極的に支持し協力するだろうと言いました。市主席はこれまでコロナパンデミックで韓国を訪問できなかったが、コロナ状況がある程度安定すればユン大統領の訪韓招待に喜んで応えるだろうとし、相互便利な時期にユン大統領が中国を訪問してくれることを希望しました>>

 

 

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