韓国各紙、ロッテグループの流動性危機を報道・・原因はプロジェクト・ファイナンスとの指摘も

2~3日前から、韓国のロッテ建設、ロッテケミカル関連で『流動性危機』関連記事が目立っています。前からロッテ建設のプロジェクト・ファイナンス関連で『資金調達がうまくいかず、同グループ内の系列会社がお金を貸している』という話はありましたが、23日あたりから記事の数が増えました。ロッテ側は『現金は十分にある』などの理由で、この噂は事実と異なると主張しています。何があったのか、いくつかの記事から状況を整理してみたいと思います。

まず、今回の件でもっとも問題とされているのが、ロッテ建設のプロジェクト・ファイナンス関連です。本ブログでも何度か取り上げましたが、最近、プロジェクト・ファイナンス関連で多くの企業や金融機関が困っています。まだまだ大丈夫だとする意見もありますが、財界5位とされるロッテすらも、その影響でこんな内容の記事が出るぐらいなら・・他の企業はいったいどういう状況なのか、気になるところです。以下、韓国日報朝鮮日報(朝鮮BIZ)から、ロッテ建設及びロッテグループの現状と、ロッテ側の主張(問題ないとする内容)を引用します。各紙、<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・財界5位ロッテグループが緊急事態だ。不動産プロジェクトファイナンシング(PF)市場が凍りついてしまい、その影響を受けたロッテ建設の資金を調達するため、他の系列会社が損を甘受しながらも総出動している。グループ側は、現金が十分だとしながら大きな問題はないと言うが、市場ではグローバル経済危機の中で行われたことであり、一歩先とて見通せないと懸念している。取引所によると、ロッテ建設に資金を投入して有償増資まで断行したロッテケミカルの株価は、22日、前日比6,000ウォン(3.45%)下がった。

この日、ロッテ持株(※日本のロッテホールディングスとは別の会社です)などによると、最近、ロッテ建設の発資金流動性リスクを防ぐために、ロッテ建設の最大株主であるロッテケミカル(43.79%)が最も大きな分を背負った。ロッテケミカルはロッテ建設が先月18日、2000億ウォン規模の有償増資を断行し、持分率に応じて879億ウォンを投資することにした。ロッテ建設の2番目の株主であるホテルロッテは861億ウォン、・・(※以下、各系列会社がお金を出したという内容ですが省略します)・・

 

・・ロッテ建設に約6,000億ウォンを投入したロッテケミカルは、イルジン・マテリアルズの買収代金2兆7000億ウォンまで用意しなければならず、資金面で負担が大きい状況だ。ロッテケミカルは18日に1兆1,000億ウォンの有償増資を発表し、前日のカンファランス・コールで買収代金2兆7,000億ウォンのうち1兆7,000億ウォンは外から借りる予定だと明らかにした。

ロッテケミカルの助けだけでは足りず、ロッテ建設は今月に入ってロッテ精密化学から3,000億ウォン・・(※同じく省略)・・を借りた。また、ロッテ建設は18日に理事会を開き、ハナ銀行から2,000億ウォン、スタンダードチャータード銀行で1,500億ウォンなど合計3,500億ウォンを借り入れることを議決したが、ロッテ建設がお金を返済できない時を備えて系列会社であるロッテ物産が資金補充約定をすることにした(韓国日報)・・>>

 

<<・・2兆7000億ウォン規模のイルジンマテリアルズ買収資金の用意と、系列会社ロッテ建設への支援で、ロッテケミカルの財務負担が大きくなった。ロッテケミカルは買収資金のうち1兆7000億ウォンを金融圏から借り入れることにして交渉を進行中だが、調達が容易ではないという見通しが業界から出ている。最近、石油化学業界の不況でロッテケミカルの実績不振まで重なり、ロッテグループの流動性危機説まで浮上している。25日、投資銀行(IIB)業界によると、ロッテケミカルは産業銀行などと協議を進めていると伝えられた。産業銀行は買収金融提供案を内部検討中だ。市場では、産業銀行が4000億~6000億ウォンの買収金融を提供すれば、他の金融会社が共にファンディングするシンジケート・ローンの形態になると見ている。

しかし、金利引き上げにより、実際の資金調達が容易ではないという見通しが業界から出ている。現在、買収金融市場の金利は年8~9%水準だが、金利引き上げの傾向で上方修正されると思われる・・・・一般的に、買収金融金利は引き出し時点に基づいて決定される。ロッテケミカルは現在、契約金2700億ウォンを納付した状態で、来年2月までに取り引きを終えなければならない。来年2月の取引終結(デルクロージング)時点には、買収金融利子が年10%を超えているだろうという見通しが多い。今年の借入金が大幅に増えたのも負担だ。ロッテケミカルの総借入金は昨年末2兆5458億ウォンから、今年7~9月期末には5兆6244億ウォンまで増えた。1兆7000億ウォンを外部から調達する場合、借入金は7兆ウォンを超えることになる。ロッテケミカルの現金性資産は、同期基準で2兆2548億ウォンだ(朝鮮日報)・・>>

 

記事は、ロッテケミカル問題にはロッテ建設があるとしながら、「ロッテ建設は不動産プロジェクトファイナンシング(PF)問題で、ローンの満期延長と借り換えが難しくなり、資金難に苦しんできた」と指摘します。ロッテ側は韓国日報との通話で、「ロッテ建設問題は、借り入れできる兄弟・姉妹(※系列会社のこと)があり、揺れない」、「全体グループ内部に現金性資産が15兆ウォン以上」「債務の70%以上は1年以降に返済する長期」、「(今回の借入金だって十分返せるので)現在としては満期延長の計画がない」としています。

しかし、朝鮮日報は、これらは全て「市場にとっては、それだけ資金事情が難しいという意味でしかない」としています。実際、ロッテケミカル及びいくつかの系列会社の企業格付けが、いっせいに下がっている、というニュースも出ています。本件は、ロッテがどうとかの話というより、『財界5位でこれか。じゃ、他の企業はいったいどういう状況なのか』という形で見るべきではないでしょうか。

 

 

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