韓国軍当局「北朝鮮に対する反撃能力の使用は、私たちの承認が必要だ」 / 日本政府関係者「他国の同意が必要なものではない」

昨日に続き、反撃能力で大きな話題になっています。そして、個人的に「あ、来た」と思ったのが、朝鮮半島有事の際に反撃能力を行使するのかどうかについて、「日本が判断する問題だ」とする日本政府関係者の発言です。旧ブログの頃から取り上げている件ですが、「たとえ有事の際でも、自衛隊は朝鮮半島に進入してはならない」というのが韓国政府の公式立場です。米軍の作戦領域内でも、韓国の同意がないと進入できないというのです。これは、日本にとっての邦人救出においても大きな壁になると言われています。

この話が盛り上がったのは、1997年、「日米防衛協力のための指針」の改定が決まったときです。ライブラリーにしか残っていませんが、当時の記事(1997年6月10日京郷新聞、8月20日ハンギョレ新聞など)を読んでみると、当時の改定で、「日本だけでなく、周辺国の有事を防ぐという内容」がある、すなわち自衛隊の活動領域が広がりました。そのとき、韓国政府は、『日本自衛隊が米軍の後方支援をするのはいいが、政府の同意無しでは、朝鮮半島領海・領空での活動は認められない』をメインとする公式立場を決め、日米両国に伝えました。

 

2014年にも、7月9日の聯合ニュースは、「政府は、有事の際、韓米連合司令官が設定する韓米連合作戦区域(KTO、Korea Theater of Operation)内であっても、私たちの要請がなければ、日本が集団自衛権を行使することを容認しないという立場だ」と報じています。当時もまた自衛権が話題になっていて、その際に日米側に通知した、と。KBSによると、12月5日には、平和憲法にかかわる内容なら韓国政府の許可が必要だ、という発言もありました。単に「進入」ではなく、『同意または許可』の範囲が、ものすごく広いということが、この発言からよくわかります。

<<・・ジョヒョンドン外交部1次官は最近、日本政府が反撃能力保有を推進していることについて、「日本の平和憲法の趣旨を変えるなど現状の変化を要求するものなら、当然ながら私たちとの協議、同意がなければならないと思っている」と明らかにしました。ジョ次官は本日(5日)午後、国会外交統一委員会全体会議に参加し、「我が国は、日本の反撃能力保有に賛成する立場なのか」とする共に民主党のキムサンヒ議員の質疑に、このように答えました(KBS)・・>>

 

今回の反撃能力についても、政府は同じことを発表しました。外交部は「重要な事案」としながら北朝鮮(朝鮮半島)にかかわる反撃能力の使用には韓国政府の同意がかならず必要だと明らかにし、軍当局も、「北朝鮮への反撃能力の使用は、我が国の憲法にかかわる問題で、私たち政府の承認が必要だ」と話しました。ここからはKBSの別記事です。<<・・政府は、日本の反撃能力保有決定が出ると、すぐに立場を明らかにしました。外交部は、朝鮮半島の安全保障と国益に重大な影響を与える事案は、事前に私たちと緊密な協議と同意が必ず必要だと明らかにした・・・・軍当局も、有事の際に日本が北朝鮮に反撃能力を使用するなら、必ず私たちの政府の承認が必要であることを強調しました。憲法によって北朝鮮も我が国の領土であるだけに、承認なしには戦力の北朝鮮進入や反撃能力の行使はありえないという説明です(KBS)・・>>

 

しかし、日本政府関係者は、外国メディアを対象にしたブリーフィングで、「それは他国の許可が必要な問題ではない。そもそも、とても緊急な事態での話なので、そんな余裕もない」と話しました。ここからは聯合ニュースの記事です。 <<・・日本政府が16日、「反撃能力」保有を宣言した中、有事に北朝鮮に対して反撃能力を行使する際、韓国政府の許可は必要ないという立場を明らかにした。日本政府関係者は16日午後、日本フォリンプレスセンター(FPCJ)が主催した外国メディア対象「日本の国家安全保障戦略」ブリーフィングで、「日本が北朝鮮に反撃能力を行使する場合、韓国政府と協議するのか」という聯合ニュース の質問に、「反撃能力の行使は日本の自衛権によるもので、他国の許可を得るものではない。日本が自ら判断するだろう」と答えた・・

 

・・この関係者は「反撃能力を発動する場合は、とても緊急な状況であろう」、「そのような場合、協議をしたり、事前に許可を得る余裕もないだろう」としながら、このように述べた。しかし、「反撃能力行使を決断する時は、情報収集と分析という観点から、必要な連携を取ることはあると思う」と付け加えた(聯合ニュース)・・>> いつものことですが、もっとも基本的なところでズレている、そんな展開です。米国側は反撃能力に対し、さっそく歓迎するという声明を出しました。「自由で開かれたインド太平洋を守るための措置だ」、と。こんな状態で3国安保共助の話がよく議題になるから、不思議なものです。

 

 

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