尹大統領、北朝鮮との「919合意」の効力停止について言及・・専門家「『破棄』は言えないだろう。国家間合意は破棄できるけど、北朝鮮との合意を破棄するのは難しい」

本ブログでも何度か取り上げたことがありますが、919軍事合意というものがあります。2018年、まだ南北首脳会談が注目されていた頃の話です。懐かしいですね。首脳会談のタイミングに合わせて、この合意も締結されました。軍事境界線周辺の一切の対立行為を止めるなどの内容です。これだけミサイルが発射されているのにどこが「いっさいやめる」なのか、これだけでみてもどれだけ意味がなかったのか、よくわかります。それでも、文政権は「北朝鮮は合意を守っている」と主張してきました。

たとえば2019年11月1日には、大統領府(国家安保室長)が国会運営委員会の国政監査で、「北朝鮮が開発しているミサイル能力は、私たちの安全保障に大きな脅威になるとは考えていない」、「まだ安保理での正確な判断を下しいない」、「9・19南北軍事合意に違反していないと見ている」とし、合意は守られているとの見解を述べました。また、ちょうどその頃、文大統領はお母様の葬式に参加していましたが、「葬儀の手続きを終えて大統領が大統領府に実質的に復帰してから、発射された」と話し、事実上、「礼儀は守った」という趣旨を話したりもしました。さすが(?)です。

 

・・で、その919合意ですが、尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が「再び領土に進入してくるなら、919合意の効力停止を考えるしかない」と話しました。ソース記事はニューシースです。大統領室周辺まで撮影して帰っていった無人機を意識してのことでしょう。すでに効力が残っているのかは分かりませんが、とにかく文政権よりは強く出た、といったところです。ただ、一部のメディアは「事実上の破棄手続きに入ったのではないか」とも報じていますが、「再び」と言っていることから、いますぐ何かの措置を下す可能性はそう高くないと思われます。以下、各紙、<<~>>が引用部分です。

<<・・尹大統領は4日、北朝鮮が再び領土への挑発をしてきた場合、919南北合意の効力停止を検討すると明らかにした。尹大統領はこの日午前、龍山大統領室で国家安保室、国防部、合同参謀本部、国防科学研究所から北朝鮮無人機関連対応戦略の報告を受け、「北朝鮮が再びこのように領土を挑発するなら、919軍事合意の効力停止を検討するように、安保室に指示した」と、キムネ広報首席がブリーフィングを通じて伝えた。大統領室の高位関係者は、「無人機だけでなくミサイル挑発など合意違反が日常化する異常化した」とし「特に今回の無人機に関しては、国民が感じる不安がないように断固とした対応 を指示したのだ」とした(ニューシース)・・>>

 

ですが、2つが気になりました。まず、「関係者」はミサイル関連の話をしていますが、複数のメディアの記事を読んでみたところ、大統領が本件で言及したのは、あくまで無人機関連です。じゃ、無人機でないなら919合意違反ではないという意味(見方にもよりますが)になってしまうのではないか、という点。次、効力停止ってなんだ?という点です。ちょっと調べてみたら、YTNの報道に、ジョハンボム統一研究院研究員の見解として「国家間合意は破棄できるけど、北朝鮮とは特殊な関係にあるし、合意を『効力停止』できる。責任問題があるのでそれ以上は難しい」というのがありました。他の国との合意は責任問題が無いというのでしょうか。

<<・・(※番組アンカー)「一部では、廃棄をしないのか、それとも出来ないのか、そんな話も出ています」/(※研究院の説明)「南北関係は特殊関係です。 国家間の関係ではありません。憲法上、朝鮮半島がすべて私たちの領土だから。しかし、国際法的には、北朝鮮は国連に加入しています。そこで、国家間に準ずる暗黙的な関係を形成されます。国家間で締結されたすべての合意は破棄することができます。しかし、南北関係発展法にはどうなっているかというと、南北間に締結された合意は、大統領が一定期間を定めて効力を停止させることができる、こうなっているんです・・

 

・・だからそこに合わせて、いったん効力を停止させることができるからそれを検討する、そんな話をしたのだと見ることができます。もう一つは、破棄よりは効力停止のほうが弱い措置になります。いくら北朝鮮が挑発をするとしても、私たちが正当な対応だとしても、9.19軍事合意は偶発的な衝突を防ぐ最後の緩衝地帯です。だから、北朝鮮がすでに事実上、無力化させこの合意に対して、私たちがはっきりした意志を示すのはいいですが、これを完全に廃棄すると私たちが先に言いだすと、偶発的衝突突が発生したとき、責任の可否についての問題があるかもしれません。だから水位を調節したものだとと見ることができます(YTN)・・>>

北朝鮮としては、無人機大成功ですね。これは、「もう一度無人機を飛ばせば、相手側に『効力停止』を言わせることができる」という意味でもありますから。

 

 

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