政権が変わっても与党の分裂は変わらず・・「親李」、「親朴」、「親文」、そして「尹心」(尹大統領の心に合わせる人)たる問題

久しぶりに、韓国内の政治ネタを書いてみます。李明博大統領の頃からあったけど、朴槿恵大統領の頃に特に流行った言葉として、「親◯」「非◯」というのがあります。同じ与党重鎮でも、大統領と親しいかどうかで『系列』が決まるという意味でした。朴槿恵大統領の頃は「親朴」と「非朴」に分かれましたし、文在寅政権でも同じく「親」「非」などの表現がありました。もう懐かしい話ですが、文在寅大統領が誕生したとき、私は左派政権が結構続くだろうと見ていました。なぜなら、競選(大統領候補を選ぶための党内選挙)のとき、3~4人の政治家が、かなりの支持を得て、しかも競選結果を認め、離党などの動きを見せる人はいなかったからです。

しかも、後に法務部長官になるチョグク氏と、当時のソウル市長パクウォンスン氏の存在もあったので、彼らの中から、これから少なくとも1~2人の大統領は出てくるだろうと思っていました。当時、保守側は朴槿恵大統領の弾劾で、朴槿恵大統領を支持していた『親朴』の勢力は弱くなり、逆に『非朴』系が力を得ていましたが、これといってリーダーになれそうな支持を得る人物はいませんでした。だから、『ああ、これ、しばらくは左派政権が続くだろうな』と思ったわけです。

 

ですが、それから、左派陣営から有力政治家が1人、また1人、様々な理由で姿を消しました。亡くなった方もいるので仕方ない展開もあったものの、中には有力政治家同士の「縄張り争い」的な展開もありましたし、不思議なタイミングで内部告発が出たりもしました。結果、残ったのは李在明氏だけでしたが、40%近い支持率を得ていた文在寅大統領の人気を受け継いだとはとても思えず、政権交代となりました。

似たような展開が、与党「国民の力」内で起きています。もうすぐ党代表選挙がありますが、そこで『ユンシム(尹大統領の心にかなう人、いわば親尹)』な人を当選させるためです。うわさでは、「キムギヒョン」という人がユンシムな人だと聞きますが、党内でそこまで基盤がある人ではありませんし、首都圏で活躍したこともあまりありません。大統領選挙前から尹錫悦(ユンソンニョル)大統領と対立していたイ・ジュンソク代表はすでに党代表を辞任しました。一時は若きエース扱いでしたが、いまは、彼の影響力はほとんどありません。

 

ハンナラ党と呼ばれていた頃から保守系の重鎮で、一時は文在寅政権の対日政策に同調しないという理由で「ナベ(ナ・ギョンウォン+安倍晋三)」と呼ばれていたナ・ギョンウォン氏は、同じく党代表に出馬する予定でしたが、少子化対策関連で『ハンガリー式』の導入を主張したことで党内から猛烈に批判され、党代表選挙への出馬をやめることになりました。私はこのハンガリー式は韓国では適用できないと思っています。

でも、1年~2年前に同じ方式の導入を主張していた人たちまで「そんなことできるわけないだろう」とナ氏を批判していることには、もう呆れるしかありませんでした。ナ氏はユンシムが弱い(ユン大統領と意見が一致しない)人で、低出産対策委員会副会長でしたが、会長の大統領はその委員会の会議に1回も出席しなかったと言われています。同じく、評価はともかくして重鎮の1人、ユスンミン議員も、もう意味がないとしながら、不出馬を宣言しました。

 

そして今度は、候補単一化でユン大統領誕生に大きな貢献をした、安哲秀(アン・チョルス)氏がターゲットになりました。同じく党代表に出馬しているアン氏は、「ユンヘッカン(尹核関、尹政権核心関係者)が党代表選挙に介入している」としながら、大統領及び大統領室は中立を守るべきだと公言しました。このことで、尹大統領自ら、「ユンヘッカンがどうとか言うのは、大統領に対する攻撃であり、敵である」と話しました。UAEでもそうでしたが、本当にこういう単語が好きなんですね、尹大統領は。以下は韓国日報の記事ですが、他に朝鮮日報、東亜日報など保守側のメディアも、「全党大会(党代表選出)がこのような形になってはならない」と懸念を表しています。<<~>>が引用部分です。

 

<<・・大統領室は、国民の力の党権走者(※党代表候補)のアン・チョルス議員側に対する批判を隠さなかった。同日、大統領室と与党側によると、ユン大統領は最近、参謀陣に「実体のないユンヘッカン(ユン大統領側の核心関係者)表現で政治的利益を得ようとする者は大統領に対する攻撃であり敵だ」と話した。また「そんなものは党の責任ある政治家が使う言葉ではない」、「ユユンヘッカンという表現を使う人は、国政運営のじゃまものだ」などの言及もあったと伝えられた。安候補側は、「大統領室の選挙介入」に抗議しているが、大統領室はむしろ「大統領をまきこんだのはアン候補側だ」と公開的に話している・・

・・朝鮮日報は社説で「大統領室の態度を見ると、『アン議員は党代表になってはならない』ともう決めたようだ」、「このように大統領室が出てくるのは初めて見た」と書いた。 また「大統領室は今後も党代表経選だけでなく様々なことに顔を出してアン議員を批判するだろう」とし、「アン議員のスタンス次第では、深刻な事態に発展する可能性がある」とした。東亜日報も社説で「今の姿は普通ではない」とし「大統領は確実に中立意志を明らかにし、尹心に関する議論を終わらせなければならない」と書いた(韓国日報)・・>>

 

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