ユン大統領の持論「NATO式核共有」、今回も進展無しか・・米国は「核の傘の文書化」で対応

日本でも似たような議論が起きていますが、NATO式の核共有に関する記事が増えています。米国と韓国が核兵器を共有する形で保有するというものです。今回の訪米でも、この議題が安保関連では中心になるという予想がいろいろ出ていましたが・・どうやら、今回もうまくいかなかったようです。朝鮮日報によると、米韓は首脳会談のあと、共同声明とは別に、「核の傘」を文書化することにしました。右側のメディアはこれをものすごく高く評価しています。特に朝鮮日報(記事1記事2)は、『日本など他の同盟国にもこんな前例は無かった』としながら、別の記事では『核共有の具体的進展だ』とまで分析しています。以下、<<~>>でちょっとだけ引用してみます。

<<・・米国は、核を保有していない同盟国が核による安保リスクにさらされないように、米核戦略資産で保護する、いわゆる「核の傘(拡大抑止)」政策を展開している。米が核の傘を提供される国は、韓国・日本・オーストラリアだけでなく、ヨーロッパの北大西洋条約機構(NATO)加盟国など30カ国余りに達する。韓米が今回特別形態で発表する核の傘に対する文書化は、他の同盟国には前例を見つけるのが難しい特別措置という評価を受けている(記事1) / 米国ホワイトハウスは26日、ワシントンDCで行われる韓米首脳会談で、共同声明の他に韓国に対する米国の拡大抑止(核の傘)を実質的に強化する内容を盛り込んだ別の文件を発表すると25日明らかにした。 大統領室も同じ立場を明らかにした。 これまで両国政府が議論してきた、いわゆる「韓国式核共有」構想が具体化されるのだ(記事2)・・>>

 

ただ、「文書化」に対する評価とは別になりますが、共有に関しては、私の考えは『逆』です。NATOや日本もそうですが、米国がすでに核の傘を明言していて、実際にそういうことになっているのに、文書化したところで、既存のシステムが画期的に変化して『在韓米軍の戦略核保有』や『米韓同盟での核共有』に進む可能性は高くないでしょう。やる気があるなら、共同声明で共有について合意したと発表するはずです。ユン大統領は大統領になる前から、一時在韓米軍に配備されていた戦略核を再配備すると話してきました。去年5月、バイデン大統領が訪韓したときにも、結構話題になりましたが、実際の会談で相応の話はありませんでした。それから米国側はこの件については何も話が無く、ユン大統領だけが国内メディアなどに「話し合いを続けている」としていました。

そして、今年になってから、1月2日。これも朝鮮日報でしたが、インタビュー記事で、ユン大統領は「米韓は米国の核を『共同企画・共同演習』で運用することを話し合っている」としました。共同演習とは、核をすでに保有している国同士で行うものなので、一部からは「ひょっとして、用語をまちがえたのではないか」という話も出ていました。そして、その翌日、バイデン大統領は関連質問に「NO(そんな演習は無い)」と答えました。それから1月11日には、『米国の核の傘に頼るのは、北朝鮮ではなく旧ソ連に対するもので、もう古い概念になった。そんなもので国民を納得させることは出来ない』、『(北朝鮮問題がもっと深刻になると)私たちの技術で核保有できる』と、自力による核保有を公言したりしました。

 

ただ、同じく1日も経たず、米国側から「目指しているのは朝鮮半島の非核化」とされました。ジョン・カービー、ホワイトハウス国家安全保障会議戦略疎通調整官は1月12日、ユン大統領の発言に関連した質問を受け、「バイデン大統領は朝鮮半島の完全な非核化を約束した。これは変わっていない」、「韓国政府は核を追求するわけではないと明らかにしている」、「ただ、米韓は共同で拡大抑止(※他国の安保にかかわること)強化を議論しており、我々はこのような方向に進むだろう」としました(1月13日聯合ニュース)。私見ですが、今回の「文書化」は、朝鮮日報が書いているような「核共有の具体的進展」ではなく、米国が、いままでユン大統領が主張してきた核関連の『テイク』に応じず、それなりにユン大統領の顔を立てるために用意したものではないでしょうか。

強いて言うなら、1月13日にカービー調整官が話した『(核共有ではない)このような方向』の延長線上にあるものではないでしょうか。繰り返しになりますが、文書化についての評価とは別に、これは「核共有しない、既存のままでいい」というものでしょう。余談ですが、1月に岸田総理が訪米したときにも、岸田総理とバイデン大統領は『朝鮮半島の非核化』に合意した、と発表しました。

 

 

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