ユン大統領、念願の核共有・保有ならず・・米国「韓国のNPT義務を再確認します」

昨日の(二つ前の)米韓核共有エントリーの続報となります。米韓首脳会談が行われました。前にも同じ趣旨を書きましたが、なにかサプライズがあったのかというとそういうわけではありませんが、だからといって何か大きなマイナスがあったのかというと、そういうこともありません。ただ、訪米前から各メディアが「いままで『ギブ』ばかりしてきた。今度こそ『テイク』だ」という論調で盛り上がっていたこともあり、どうしても国内ではパッとしない反応です。もちろん、右側メディア・保守支持層は大いに評価していますが。

今回の首脳会談のメインは、いわゆる「ワシントン宣言」になりました。昨日お伝えした、核の傘の文書化というものですが、確かに、「核など 米国の力量をすべて使う」という内容があります。ただ、昨日も書きましたが、今までの米国は同盟国への拡大抑止(他国の安保へかかわること)として核の傘を提供してきたので、何か新しいことができたというより、『再確認した』というのが合ってる気がします。再確認とはいえ、わざわざ宣言まで出せたわけだし、北朝鮮問題をかかえている韓国の大統領としては普通に『強く再確認できました』としておけばそれでいい気もしますが・・ニューシースなど複数のメディアによると、ユン政権としては、どうしてもこれを『核共有に準ずるもの』としたかったようです。大統領室は、「核共有だと感じられるだろう」など、無理のある説明をしています。また、ワシントン宣言には、「韓国がNPT義務をはたすことを再確認した」という内容も入っています。以下、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・大統領室は26日、ワシントンホワイトハウスでのユン大統領とバイデン米国大統領の首脳会談で採択した「ワシントン宣言」について、 「米国が一つの同盟国に核抑止を実現するために具体的な計画を宣言し、大統領が約束した最初の事例」と明らかにした。それと共に「米国と核を共有しながら過ごすように感じられるだろう」と話した。キムテヒョ国家安保室1次長はこの日ワシントンに設けられたプレスセンターで取材陣と会って「ワシントン宣言」についてこうブリーフィングした。次長は「首脳レベルで拡大抑止運営方案を具体的に摘示した共同合意文を最初に採択した」とし「これは拡大抑止に対する両国最高リーダーシップの強力な意志を示す」と明らかにした。

続いて「両国は韓国型拡大抑止の実行計画を盛り込んで、過去とは異なるレベルに引き上げた」と評価した。拡大抑止運営方案を別途の宣言文件で作成したのは今回が初めてだ。「ワシントン宣言」と命名したのは、70年前、韓米防衛条約が締結されたのがワシントンで、韓米同盟70周年に合わせて行われた韓米首脳会談の意味を生かすための次元だ。ワシントン宣言は、「核協議グループ(NCG)創設」、「有事の際、米国の核作戦に対して韓国が在来式支援を行う共同実行及び企画」、「情報共有」、「核を含む米能力の総支援」、「韓国の核拡散禁止条約(NPT)義務再確認」などが含まれている(ニューシース)・・>>

 

最後の部分だけみても、核共有・保有はできませんでした。1月2日、朝鮮日報とインタビューで、ユン大統領は、「既存の核の傘や拡大抑止の概念は、北朝鮮が核を開発する前、ソ連・中国に備えた概念であり、米国が全部何とかしてくれるから心配しないというものでしかない」と発言しました。1月11日の外交・国防部業務報告では、ユン大統領は戦術核兵器の再配備と、自力の技術による核保有の可能性も取り上げました。当時も「現実的な問題を考慮すると、核の傘の強化が最善策ではある」としてはいましたが、大統領が核保有を公式に取り上げただけに、話題になりました。大統領候補だった頃から話していた在韓米軍の戦術核再配備について進展がなかったので、このような発言につながったのではないか、という見方もありましたが。

米国としては、既存の概念を宣言という形で再確認しながらユン大統領の顔を立て、NPTを取り上げてこれ以上の深入りを止めた、といったところでしょう。しかし、公式発表で「感じられる」とするのはちょっとどうかな、と。「準ずるもの」とか、もっと他の表現もあったでしょうに。とにかく、各メディアとして心待ちしていたのは、去年夏に日米が先端半導体などで協力する「2+2経済バージョン」創設に合意したときのような、そんなニュースだったと思いますが・・そんな内容は、いまのところ、聞こえてきません。

 

 

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