去年から続く「対中貿易赤字は一時的ではなく、構造的なもの」という指摘・・当局は「下半期から回復する」という予想だけ

ソース記事ではありませんが、中央日報に、「今年に入り、韓国の対中輸出が、主要国とされる国の中で最も大幅に減った」という記事が載りました。米国や日本などに押され対中輸出順位が5位まで下がり、4~6月期に反騰するの可能性も大きくない」、という内容です。対中輸出の規模でランクがどうなるのかは、大した問題ではないでしょう。重要なのはその中身です。記事は、「中国への輸出が長期間停滞しために貿易赤字も急増している。1~3月期だけで78億4000万ドルの貿易赤字だった」としています。このままだと(中国経済との関係を考えると)産業全体の輸出競争力そのものが懸念される、とも。

2000年代になってから(いわゆるIMF期の後に)、韓国の経済発展は二つの柱に支えられました。「民間の債務(特に家計債務による不動産投資)」と、「中国経済との融合」、いわゆるチャイナ・ブームです。最近特に話題になっている半導体だけ見ても、2022年時点で、サムスン電子は中国の「西安」にある工場でNANDの40%を生産しています。SKハイニックスは同じく中国「無錫」と「大連」の工場で、DRAM50%、NAND30%を生産しています。大韓商工会議所の資料によると、半導体輸出において中国が占める割合は昨年39.7%。2000年に3.2%だったので、単純に10倍以上増えました。

 

通貨としてみても、中国元とウォンは妙に連動する側面があるし、私は中韓の経済は『構造的に』一つになっていると言ってもいいでしょう。中国と韓国の経済関係についても多くのエントリーを書いてきましたが、個人的にその中でも特に印象深かったのは、1月5日韓国日報の記事に載っている、この関係者の発言です。「設備、素材、部品、ノウハウがすべて中国にある。同盟論理で事業を動かすことができる段階は、すでに過ぎた」。中国から離れればいいと言うのは簡単だけど、そういう立場ではない、というのです。しかし、そんな中、『構造』に変化が起き、新しい『構造』が出来上がりました。いままでのように韓国が黒字になる構造ではなく、中国が黒字になる、新しい構造のことです。

 

「構造的な問題なので離れることができない」としている間に、新しい構造的な問題が起きてしまった、とでも言いましょうか。去年あたりから多くのメディアがこの件を指摘しています。新型コロナとかウクライナ事態とかいろいろあったし、対中貿易にそれらの変数が及ぼした影響はたしかにあっただろうけど、もっとも根本的な原因は、両国の貿易においての構造変化である、『対中貿易赤字は構造的なものであり、一時的な現象ではない』という指摘です。昨日もまた、デジタルタイムズというネットメディアが、同じ趣旨の記事を載せました。しかし、こんな中でも、まだまだ多くのメディアは『安米経中(安保は米国、経済は中国)』の夢を見ており、政府・当局もそれを意識してか、「問題ありません」「下半期には回復します」だけを繰り返しています。以下、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・スマートフォンからノートパソコン、電気自動車に至るまで、リチウムイオンバッテリーは我が国の単一品目輸出2位で世界最強だが、中国との貿易では輸出国ではなく輸入国だ。貿易協会によると、リチウムイオンバッテリーの中国産輸入額は今年に入って今年2月までに46億1482万ドルで、輸出額(25億7167万ドル)よりほぼ2倍多い。スマートフォンや液晶表示装置(LCD)、発光ダイオード(LED)照明など他の先端産業でも、我が国は対中輸出国ではなく輸入国になってから久しい。韓中修交30年間、中国企業は政府の莫大な補助金や広大な内需市場などに支えられ、我が国の企業が占める市場でシェアを伸ばしており、その結果が、最近の対中国貿易収支赤字につながっている。対中貿易赤字は一時的ではなく構造的である可能性が大きいという話だ・・

・・(※対中貿易収支が赤字になって久しいという内容の後に)品目基準対中国輸出1位のメモリ半導体の不振が最も大きな影響を及ぼした。2月末基準、対中国メモリ輸出額は前年同期よりなんと44.6%も急減した。しかし、半導体だけでなく、中国の中間財国産化と先端産業育成政策で、我が国に対する産業依存度が減る傾向にあるという分析が少なくない。韓国銀行は「中国リオプニングの国内経済波及影響分析」報告書で、「中国の自給率上昇のような構造的要因は、中国経済回復の(他国への)波及影響を制限する可能性がある」とし「中国が産業高度化のために持続して自給率を高めながら、輸入需要が基調的に弱まっている」と指摘した。これまで中国は我が国から中間財を輸入、完成製品にして輸出してきたが、このようなグローバル分業構造が揺れているという意味だ(デジタルタイムズ)・・>>

 

先の、「設備、素材、部品、ノウハウがすべて中国にある。同盟論理で事業を動かすことができる段階は、すでに過ぎた」という言葉。「離れられない」という言葉ですが、これが単に「利益を逃す訳にはいかない」ということでしょうか。これが、もっと広い視野からして、「単なる利益(利益が出ないなら離れることができる)」ならまだ分かりますが・・もし、「赤字でも離れられない」という意味なら、それがどういう展開になるのか。これはユン大統領というより、『次の人(ミョンたんか、別の人かは分かりませんが)』あたりで、また本ブログの定番ネタになるかもしれません。

 

 

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