米国、サムスン電子・SKハイニックスの中国工場にEUV露光装置など先端装備の搬入は認めず

9月28日にエントリーした通り、米国は韓国の半導体メーカーサムスン電子・SKハイニックスの中国工場への装備搬入を無期限で認めました。一昨日、韓国大統領室が公式に発表しました。VEU(検証された企業)向けの輸出(装備搬入など)を個別ではなく一括で承認する方式で、いままでと同じです。韓国側の記事には記述がありませんが、TSMCなども同じ方式だったので、こちらも同じく無期限猶予になったと思われます。ただ、事前にリストを米国側に提出し、承認を得る必要がありますが・・この件で、一部の専門家から「EUV露光装置など先端半導体製造に必要な装備が、搬入できないとなっている」と指摘されています。9月の報道には無かった内容です。

極端紫外線(EUV)露光装置は、最近、日本でも話題になっていました。日本の工場へマイクロン社が搬入するとか、TSMCが日本での生産ラインに6ナノを追加し、その製造のためにEUV露光装置を日本に設置するとか、そんな話が出ています。EUV露光装置には日本メーカーの技術が必要ですが、装置そのものが日本の工場に配置されるのは今回が初めてになる、とも。聯合ニュース、ヘラルド経済、アジア経済などがこの件を指摘し、『一部の装備は搬入できない状態が続いているわけだ』『補助金関連条件として、中国での生産力拡張は年5%までとなっている(米国で補助金をもらうメーカーは、中国の既存工場での先端半導体生産能力を年5%以上拡張してはならない)のに、先端半導体装備の搬入までできないと、アップグレードは事実上難しいのでは』、と書いています。ただ、政府は、『VEU方式での装備搬入はとんでもない大勝利(原文ママ)』としています。以下、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・バンムンギュ産業通商資源部長官は国会国政監査で「米国政府がサムスン電子・SKハイニックスをVEU(検証されたエンドユーザー)として承認したのは、途方もない勝利だと思う」と10日述べた。バン長官はこの日の午前、国会産業通商資源中小ベンチャー企業委員会国政監査でイジャンソブ共に民主党議員が「極紫外線(EUV)露光装備は依然として中国に持ち込むことができないことが確認された」と指摘すると、このように 答えた。チェサンモク大統領室経済首席は「米国政府がサムスン電子・SKハイニックスの中国工場に対して別途許可手続きや期限なしに米国産半導体装備を供給すると最終決定した」と前日明らかにしたことがある。同議員は「SKハイニックス収益の大部分を占めるDRAM生産工程を高度化するにはEUVが必要だが、SKハイニックス中国工場への搬入が不可能だ」と述べた。すると長官は「現在、中国工場にはEUV機器までは必要なく、それ(EUV)以外にも高度化機器はいろいろある」と答えた(アジア経済)・・>>

 

長官は「他にもあるもん」としていますが、EUV露光装置「だけ」でしょうか。他にも搬入できないものは結構ありそうな気がしますが。他にも、各政党と専門家からは「確かに相応の成果ではあるが、政府の言うほど大きな成果なのか」について指摘が相次ぎました。代表的なものが「米国から補助金を受ける企業は中国での生産能力を5%以上増設できないという部分です。記事によると、バン長官は「中国工場に装備が搬入され、技術開発に成功すれば、生産が5%、10%より多く増える」と話した、とのことですが・・それなら中国でやらなくてもいいのでは。あと、この部分だけヘラルド経済ですが、この5%というのは、量産を前提しての運営に必要な最小値に届かないもので、事実上、工場を長期間続けるのは難しいという話も出ています。

チェジョンドン「テックインサイツ」メモリー部門首席副社長は、「ガードレール条項はサムスンとSKハイニックスにすごく不利で気まずい事項である」とし「先端チップ関連で5%に制限するというのは、今後、最小限の量産維持のための新規施設投資、及び、新規装備など工場改善のための投資さえも難しくする要素」と指摘しました。ファン・チョルソン、ソウル大材料工学部教授も、ウエハ投入5%制限を置いて「サムスン電子とSKハイニックスに、中国工場を畳めと言っているのです」と話しました。

 

とんでもない勝利かどうかはともかく、今回の猶予措置が相応の成果を出したのは事実です。しかし、先のEUV露光装置もそうですが、この猶予は続けていいという意味ではなく、『ゆっくり、中国から離れろ」と言っているのではないでしょうか。この部分は、ヘラルド経済の記事のファン教授の見方が合っている気がします。ちなみに、補助金関連条項も「中国での生産拡張は先端5%、先端でないものは10%まで」で、サムスン電子とSKハイニックスのものは先端扱いです。なのに、先端半導体製造用の装備が搬入できないというのも、妙な話です。そもそも、配慮を得たのは、勝利とは言えないでしょう。

 

 

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