韓国電力公社社長、異例の公言・・「債務累積でもう限界です。電気料金を上げてください」

事実上、韓国唯一の電力会社であり、韓国最大の公企業とされる「韓国電力公社」の社長が、債務の累積でもう自社だけの努力では限界であり、ぜひ電気料金を上げてほしいと公言しました。トーンやニュアンスにもよりますが、ここまでダイレクトに話すのは珍しい、とのことです。ソースはソウル新聞(5月16日)で、主に17日付で多くのメディアが報じています。これ『も』結構前から指摘されてきた問題ですが、韓国では電気料金で多くの赤字が発生しています。電気料金を安くするため、事実上の唯一の電力会社である韓国電力公社が赤字で電気を販売しているわけですが、もうこのやり方ではなんともならなくなりました。

本ブログでも4月23日に取り上げましたが、フィナンシャル・タイムズが韓国経済の問題点を指摘した『漢江の奇跡はおわったのか』という記事でも、この問題が取り下られています。「いままで、事実上の補助金として電気を安く供給してきたが、もう構造的に限界に来ている」、と。ちなみに、韓国の電力は、発電部門は6社の子会社に分割されているものの、配電部門においてはいまだ電力公社1社体制で、価格入札制度(PBP)ではなく、変動費反映市場(Cost Based Pool、CBP)で運用されています。

 

この件、特に2年ぐらい前から記事が増えてきましたが、その主な理由は「韓電債」と呼ばれる、赤字をなんとかするために電力公社が発行した債券のことでした。政府保証付きの債券なのに、これを発行し過ぎで、他の会社が出した債券が売れなくなる現象が起きたからです。中央日報(2023年4月4日)によると、2022年、会社が発行した債権のうち、約45%が電力公社1社によるものでした。企業としては、資金流動性確保に大きな問題になるわけです。同じく中央日報の別の記事(2023年3月15日)によると、電力公社とガス公社の債務を合わせるとGDPの11%になる、とのことでして。電力公社だけで、連結基準総債務が200兆ウォンを超えている、と言われています。そこで、もうこれ以上は維持できないと判断し、社長が公言するしかなかったのでしょう。とはいえ、ユン政権、レームダックがどうとかの現状で電気料金上げますと言えるのか。そこはよくわかりません。以下、ソウル新聞から<<~>>で引用してみます。

 

<<・・キムドンチョル韓国電力公社社長は16日、「最後の手段で最小限でも電気料金の正常化は必要であることを政府当局に強く申し上げたい」と明らかにした。キム社長はこの日に開かれた記者懇談会で、「韓電はこれまで電気料金引き上げを最小化するために力を尽くしてきたが、我が社の努力だけでは大規模累積赤字を、これ以上なんとかできる余裕のない限界にきた」としながら、こう述べた・・・・韓電はウクライナ事態から、エネルギー価格の急上昇時期に原価よりも安く電気を供給し、2021~2023年の連結基準で43兆ウォンの赤字がたまった。昨年末、連結基準総債務は203兆ウォンであり、1年の利子費用だけで4兆5000億ウォンを使った・・

・・社長は「最近、中東リスクによる原油価格高騰と1300ウォン台後半の為替レートで、財務の不確実さが再び大きくなってきた状況だ」と、対外危機状況を見た。続いて「昨年末に施行した子会社中間配当という創社以来初の対策も、もう残っていない」とし「もし料金正常化が行われなければ、増加する電力需要に備えた電力インフラ投資と停電故障予防に要する必須電力設備財源調達はさらに難しくなるだろう」と話した・・

 

・・海外の事例も言及した。社長は「最近3年間、グローバルエネルギーリスクにおいてイタリアは電気料金を700%まで引き上げた。イギリスは174%引き上げたが、30社余りの電力販売事業者が破産した」とし「フランスは赤字に耐えられない電力会社EDF持分100%を完全国有化したほどだ」と話した。社長は「(料金引き上げなしには)韓電と電力産業を支えている協力企業とエネルギー革新企業のシステムそのものが懸念される」とし「これは結局、国家産業競争力の弱化につながるのが火を見るように明らかだ」と強調した(ソウル新聞)・・>>

韓国内の企業、特に、ものすごく電気を使う半導体企業にとっては、「事実上の補助金」が廃止されるような結果になるでしょう。また、政権支持率にもそのまま反映されそうな話です。「債務がうわあぁ」と、「支持率がうわあぁ」が対立して、またそのまま次の政権まで持ち越し・・そうなるのではないか、そんな気がします。

 

 

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