直訳すると「仕事分け」になりますが、韓国にはイルチャリ チョゲギというものがあります。「仕事(雇用)の切り刻み」「細切れ雇用」といった意味になります。いわゆる「ワークシェアリング(仕事分かち合い)」とは異なり、この「仕事分け」は「企業が法的・経済的な義務(各種手当や社会保険など)を逃れるために、あえて労働時間を細切れにして雇用する行為」を指し、労働環境の悪化を招くとして深刻な社会問題になっています。左側政府の政策などにより労働者寄りの政策(本当に役に立っているかは別にして)が進み、企業はグレーゾーンを使って逃げる・・といったところです。この「仕事分け」には、大きく分けて2つの種類があります。その1:週15時間未満の「超短時間労働」の細切れアルバイト(仕事分け)。韓国の労働法(勤労基準法)には、「週の所定労働時間が15時間未満」の労働者に対して、以下の権利を適用しなくてもよいという例外規定があります。
すなわち、その分、権利が減るわけでして。まず「有給休日手当は無し」。週休手当(週15時間以上働き、所定の日数を出勤すると、働いていない1日分の日当が追加支給される制度)が不支給になります。事実上、時給が約20%下がる計算になります。「退職金・有給休暇も無し」。1年以上働いても退職金無し、有給も発生しません。「社会保険の加入義務も緩和」。国民年金や健康保険の職場加入義務から外れます。言うまでもなく、人件費を抑えたいコンビニ、カフェ、飲食店、あるいは学習塾(私教育のための塾など)などの事業主が、「1人のアルバイトを週20時間雇うより、『週12時間働く人を2人雇う』といった手法をとります。その方が人件費支出が少ないからです。労働者側からすると、生活費を稼ぐために「月・火はA店で12時間働き、水・木はB店で12時間働き・・」と、複数のアルバイトを掛け持つことになります。これを、「N(多くの)雑(ザプ)な仕事」に「~er(~をする人)」を繋げて「Nザプラー」とも言います。
その2: 契約期間を細切れにする「短期契約の切り刻み(チョゲギ契約)」。もう一つは、主に事務職、専門職(大学の非常講師など)、製造業、あるいは公共セクターの非正規職で見られる「契約期間」の切り刻みです。韓国の「期間制法(非正規職保護法)」では、契約社員(期間制労働者)を、2年を超えて雇用した場合、原則として「無期契約職(日本とは制度が異なりますが、あえていうなら『正社員に近い扱い』になります)」に転換しなければならないと定められています。そこで、企業側は、無期転換の義務を回避するため、2年未満(例えば11ヶ月、23ヶ月など)で契約を打ち切ったり、あるいは「3ヶ月単位」「5ヶ月単位」といった超短期の契約更新を繰り返す手法です。ひどいケースでは、意図的に数週間の空白期間を空けてから再契約し、勤続年数のカウントをリセットするような「法律の抜け穴」を突く行為も含まれます。
他にもいくつか種類があると聞きますが、これくらいにして・・たまにニュースになるくらいならともかく、なぜこれが「社会現象」・・じゃなかった社会問題になっているのかと言いますと、背景には、2018年以降の「最低賃金の急激な引き上げ」や「週52時間勤務制の導入」によって高まった人件費を、中小企業や自営業者が吸収しきれなくなったという側面があります。結果として、以下のような歪みが生まれています。青年層の雇用指標が、統計上は「就業者数」が増えていても、中身は週15時間未満の不安定な仕事ばかりで、質が著しく低下しています。いわゆる「偽りの雇用改善」です。一般的に青年層に多いとされていますが、個人的に、老年層でも同じではないのかと思っています。適当な仕事を「配る」ばかりなので。いわゆるワーキングプア(労働の貧困層)の若者や高齢者が増えているわけです。現在も労働界からは「週休手当の基準(週15時間)を見直すべきだ」という声が上がっていますが、経営側(特に小規模自営業者)の負担増との間で議論が平行線をたどっており、構造的な解決が難しい課題となっています。ここまでのまとめは、グーグルのAI「ジェミニ」が手伝ってくれました。
で、なんで急にこの話が出てきたのかと言いますと・・地方政府(自治体)もまた例外ではありませんでした。1年契約をしておいて、「364日しか働いていないから退職金は無し」にしていたわけです。韓国日報(23日)によると、自治体を調べてみたら、サンプル検査だったけど「うわあぁ」だったそうです。AIに見せたら「**政府や地方自治体(公共部門)で横行していた実態**を告発する非常に深刻な内容です」という真剣なメッセージが返ってきました(笑)。
<<・・(※サンプル検査の一部として)全羅北道の益山(イクサン)市は、期間制(契約)労働者3,301人のうち3,025人を1年未満で契約した。退職金を支給しないためだ。現行法上、法定退職金は労働者の勤続期間が1年以上になって初めて支給義務が生じる。益山市議会によると、同市が定めた期間制労働者の契約終了日は、勤務期間1年からわずか2〜3日足りないものだった。気候エネルギー環境部傘下の落東江流域環境庁も、50代の清掃労働者の契約期間を「364日」に設定し、退職金をまったく支給しなかった。公共部門の非正規職労働者に対する構造的な差別と労働搾取の実態が、政府の調査結果によって確認された。李在明大統領までが乗り出し、「政府が最も模範的な使用者(雇い主)にならなければならない」と叱責したが、一部の地方政府は非正規職労働者にとって依然として「悪徳社長」だったのである。
364日契約 1,833人・・「悪質な社長」地方政府(※見出し)。雇用労働部は23日、「地方政府の非正規職労働条件遵守に関する企画監督」の結果を発表した。今回の監督は、全国226の基礎自治体(市・郡・区)のうち30カ所を対象に実施された。11ヶ月〜1年未満の期間制労働者の割合が高い、あるいは「切り刻み契約(チョゲギ契約)」の慣行が疑われる自治体を選別した。中央政府機関や広域市・道(※日本の都道府県に相当)は除外され、基礎自治体全体の中でも約13%しか監督を受けていないにもかかわらず、違法事例が続出した(韓国日報)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年8月30日)<韓国リベラルの暴走>です。韓国新政権のこと、日韓関係のこと、韓国において左派という存在について、などなどに関する本です。・準新刊は<THE NEW KOREA>(2025年3月2日)です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。・既刊、<自民党と韓国>なども発売中です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。