韓国不動産市場の問題の一つ、『他人から預かった金で家を建てた』人たちの話

もちろんデータは重要ですが、ある事案が象徴的に全体の印象を物語ってくれることもあります。中国の不動産関連ニュースを見ていると、もちろん債務の金額がどうとかの話も印象的(?)ですが、マンションを購入したのに工事が中止され、完成もしていないマンションで暮らす人たちの映像が、さらに強い印象を残してくれたりもします。実は韓国でも、仁川の永宗島というところのマンション団地で同じことが起きて、購入者たちが入居できずに野宿をしながらデモを行っていますが・・やはりそういう事例は、強く記憶に残ります。

韓国の不動産関連だとかならず出てくる、伝貰(ジョンセ、保証金という敷金を大家に預けて家を借りる制度のことで、補償金はあとで返してもらえる韓国特有の制度)関連で、どういう状態なのかを知人の経験から述べる記事がありました。24日の週刊東亜の記事で、経営学博士が書いた記事です。サラリーマンとして普通に自分の家に住んでいた、知人のAさん。多世帯住宅(小さなアパートなど)を作って、それぞれの部屋をジョンセで貸す『投資』が流行り、町の人たちはAさんに「町をだめにする気なのか」と、家をこわしてアパートを作るように促しました。この部分、多分ですが、「ジョンセ用アパートが集中したところ」という噂が広がれば、その分、新しい入居希望者が増えるからだと思われます。そこで、他の人たちと同じく、『他人が預けた金』でアパートを建てたAさん。そのあとどうなったのか、以下、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・ワンルームに住む私の知人が、ジョンセ契約が終わり、引っ越すことになり、家主にジョンセ敷金を返してくれと言った。ところが、家主はジョンセ金を返してくれなかった。「新たに入ってくる入居者がいなければ、返すことができない」ということだった(※すでにどこかに使ってしまったので、新しい入居者からジョンセ金をもらってそれで返すしかない)。契約期間が終わったのにお金を返してくれないと、知人は家主を非難した。「こんなに多くのワンルーム入居者から金を受け取ったので、お金がそんなに多いはずなのに、なんで返してくれないというのか」 「ジョンセ金で受け取ったお金を他のところに使ったか貯めているにちがいない」と、知人は家主をうったえる予定だという。

契約期間が過ぎてもジョンセ金を返さないのは、確かによくない。私が認めることができない部分は、「家主はお金があるにもかかわらず、返してくれない」とする部分だ。まさか、そんなことがあるだろうか。家主は不動産は持っているが、現金は無いのだ。数千万ウォンというお金を返すには、本当に次の入居者か敷金を受け取る必要がある。もちろん、家主が本当にどこかにお金を隠しておいたかもしれない。しかし、ほとんどの家主は、返す金をその手に持っていない。家主だって困っているわけだ。

 

私の知人に、多世帯住宅所有者だったAさんという人がいる。Aさんはもとは一戸建ての住宅に住んでいた。ところが、あるときから、周辺の一戸建て住宅が次々とアパートに変わるようになった。近所の住民たちは「なぜここだけが一戸建て住宅のままなのか」、「近所まで台無しにしないで、早くアパートにに変えろ」と要求してきた。Aさんもアパートを建てようかなと思った。しかし、アパートを建てるには建築費が必要だった。月給だけで暮らしていたAさんは、それほど余裕がなかった。

そんなとき、建築事業者はがAさんに、お金がなくてもアパートを建てることができますと話した。多世帯住宅を建てた後、各入居者からジョンセ金を受けて、建築費を払えばいいということだった。結局、Aさんは8世帯が居住できるアパートを建て、そのうちの1つに自分も住むことにした。残りの7世帯はジョンセで出し、その金で建築費を出した。 Aさんは「私のお金をかけずに新しい家を手に入れたから、得した」と思っていた。ところが、それからすぐ、問題があるとわかった。そもそもジョンセというのが大家に不利なシステムである。

 

修理費など管理のための費用、税金などが持続的に出ていった。ジョンセ金ではもうその金額を賄うことができなくなった。Aさんは、自分の月給でその支出を負担しなければならなかった。これまで給料を生活費としてのみ使用したが、建物維持費などが追加されたため、むしろ生活水準が低くなった。最大の問題は、入居者が出ていく時だった。その時にジョンセ保証金を返さなければならないが、ジョンセ金を建築費として全て使用したせいで、手元に金がなかった。

次の入居者からお金を受けなければ、返せない状況になっていたのだ。それも、すごく運が良い時だけ可能だった。もちろんAさんも契約書上の日付にちゃんとジョンセ金を返したかった。入居者が出ていくと言えば、あちこちカネを借りるために走り回った。銀行、共済組合、友人、親戚、職場の同僚などからできる限りお金を借りた。Aさんの日記帳を見ると、入居者たちのジョンセ金を返すため、あちこちでお金を借りたり返済したりした話が、10年以上続いている(週刊東亜)・・>>

 

Aさんはすでに亡くなっていて(詳しくは書かれていませんが)、息子さんが引き継いだそうです。息子さんは生活に余裕があったので、できれば入居者たちの要請(建物の設備メンテナンスなど)を聞くようにしていますが、いつのまにか約260万円の赤字になっている、とのことです。記事を書いた学者さんは、「入居者たちの要請を聞いてやろうとするからそうなる」「善良な大家のふりをしないで、厳格にしないといけない」と書いています。この結論もまた、かなりインパクトでした。

 

 

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