韓国情報に詳しい(色んな意味で)人ならなぜか知っている、「伝貰」制度。韓国のユニークな住宅賃貸システムで、入居時に住宅価格の5割〜8割程度の高額なお金(保証金と言います)を大家に預ける代わりに、毎月の家賃支払いが免除されます(光熱費などは自己負担)。退去時にはその保証金が全額戻ってきますので、長い間、韓国の経済を支えてきました。しかし、大家からすると、昔は保証金を銀行に預けておくだけでも十分でしたが、最近は保証金を投資(投機)に使ってしまうのがスタンダードになっているし、保証金もどんどん値上がりしていて(前は5割でも高すぎると言われていましたが、最近は8割も普通にあります)、多くの問題が生じています。最近、この伝貰が「絶壁(崖、物件が無い)」状態だそうです。そもそも入居など不動産取り引きそのものが低下しているし、大家が月貰(毎月家賃を支払う制度、保証金は少ないが、毎月の支払いは返還されない)を好むようになったこと、などが原因です。
ソース記事とは別の関連記事などによると、ソウルだけでなく、地方都市でもこういう「崖」現象が広がっている、とのことでして。中央日報(2日)はこの件を「少子化問題の一つの原因になる」としながら、対策を論じています。そもそも男に「家は用意しないと結婚できない」という風潮が強く、結婚した後に夫婦が頑張って家を購入する日本や欧米とは異なる、とのことでして。余談ですが、2000年代になるまでは、「女が用意してくる」というのが一般的でした。医師や弁護士などと結婚したければ、女性の方から(詳しくは女性の親が)「3つの鍵(高級車の鍵、マンションの鍵、事務所または医院の鍵)」を用意してこないと、結婚できないという話です。韓国で育った人なら、この「3つの鍵」は何かの形で聞いたことがあるでしょう。記事は指摘していませんが、こういう風潮もまだ残っていると思います(すなわち、男だけが苦労しているわけではない)。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・「伝貰の絶壁」が出産忌避につながらないようにするには(※題)・・韓国社会の結婚文化は、長い間「完成型の結婚」を目指してきた。少なくとも伝貰以上のまともな新婚家庭、周囲に見劣りしない嫁入り道具(※「婚需」と言います)、そして安定した職場の「三拍子」が揃って初めて、結婚の門戸を叩く資格が得られると信じられてきた。結婚に対するこうした認識は大きく変わりつつあると言うが、韓国人の心理の底辺には、依然として既存の固定観念の影響が残っているようだ。この三拍子の条件の中でも、最も巨大な障壁となっているのが「住居問題」である。経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で韓国にのみ存在する「伝貰制度」は、これまで庶民が毎月の住居費を節約し、資産を形成するのを助ける「住居のはしご(※ステップアップの手段)」の役割を果たしてきた。
しかし、このはしごはギャップ投資(※住宅の売買価格と伝貰保証金の差額(ギャップ)が少ない物件を狙い、伝貰の保証金を引き継ぐことで、わずかな手元資金だけで家を購入する投資手法ですが、自己資本が無いこともあって家の価格が下落すると保証金が返せなくなるため、社会問題とされています)が横行したことで、住宅価格高騰の火に油を注いだという批判も浴びた。李在明政権による融資規制や土地取引許可制の拡大措置は、投機需要の抑制を狙ったものだったが、市場では伝貰物件の失踪と価格急騰という「伝貰絶壁(供給の激減)」を招いてしまった。現在は、伝貰・月貰(月払い家賃)・売買価格が同時に急騰する「トリプル急騰」により、あちこちから悲鳴が上がっている。
伝貰制度が構造的な消滅のプロセスに入り、保有税の負担が増したことで、大家たちは安定した現金を確保するために、伝貰から月貰へと次々に切り替えている。実際、国土交通省によると、今年第1四半期の賃貸取引における月貰の比率は68.3%を記録し、伝貰の「月貰化」が非常に速いスピードで進んでいる。新婚夫婦の賃貸世帯における伝貰の入居割合は、伝貰詐欺への不安、融資規制、新規入居物件の不足によって減少している。その一方で、ウォルセの入居割合は急激に上昇している。先進国の中で、結婚する時に必ずマイホームやそれに準ずる住居を用意しなければならないという強迫観念を、韓国ほど強く抱いている国は珍しい。欧米や日本では、賃貸(ウォルセ)からスタートして資産を蓄え、「最初の家(スターターホーム)」を買い、段階的に家を大きくしていく「成長型の結婚」が一般的だ。
また、韓国はとりわけ男性に住居用意の責任を重く負わせる。結婚を控えて「新郎が少なくともアパート(※マンション)の伝貰くらいは用意すべきだ」という社会的な目線は、男性にとって大きな負担となり、女性にとっても高い参入障壁となる。ワンルームや小さなアパートからスタートすることを「失敗」や「苦しいだけ」と見なす文化的な認識、見栄を張る体面文化は、若者たちを「完成型の結婚」へと追い込んでしまうのだ・・・・「伝貰絶壁」は韓国社会に苦痛を伴う宿題を投げかけた。しかし、この危機は逆説的に、韓国社会がこれまで執着してきた「見せかけの結婚」や「不動産投機的な住居文化」を清算する機会でもある。結婚が「準備された者たちの専有物」ではなく、「共に築き上げていく旅路」であるという認識が確立されなければならない。迫る地方選挙に出馬した自治体首長の候補たちが、誰よりも深く胸に刻むべき大目(ポイント)である。(中央日報)・・>>
記事は対策として「住宅価格の長期的かつ下方安定化」「高品質な長期公共賃貸住宅の供給拡大」「ライフサイクルに合わせた住宅ローンの設計」などを主張していますが、そう簡単にできるものならとっくに出来ているのでは、な気もします。どうするのかと聞いても、「借金で株式投資する」とか答える人が圧倒的に多いのでは・・
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年8月30日)<韓国リベラルの暴走>です。韓国新政権のこと、日韓関係のこと、韓国において左派という存在について、などなどに関する本です。・準新刊は<THE NEW KOREA>(2025年3月2日)です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。・既刊、<自民党と韓国>なども発売中です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。