中国メディア「中国や日本のようになりたがっているからこそ、バランサーとか中枢国家とか、そんなスローガンが出てくるのだ」

本ブログだけでなく、韓国で新しい政権がスタートすると、何かのスローガンがよくネタになります。多分、もっとも有名なのが盧武鉉(ノムヒョン)大統領の「東北アジア均衡者論(バランサー論)」ではないでしょうか。文在寅(ムンジェイン)大統領の「運転者論(仲介者論)」も有名でした。今のユンソンニョル政権では、GPS構想というものが流行っています。

米韓首脳会談の共同声明でも出てきた言葉で、尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は「気候変動や新型コロナなど、ますます複雑になるグローバル的な課題に直面した中、韓国こそがインド太平洋及び他の地域で、自由、平和、繁栄を促進するためにさらに役割を拡大していく」とし、それを韓国のグローバル中枢国家(Global Pivotal State)構想としました。UPIニュースというネットメディアによると、「GPS」と略するそうです。略の話は初めて聞きましたが、そういえば、中枢国家とは前から結構な頻度で言っていました。

 

それからパク・ジン外交部長官などが、他国の閣僚などと会うと例外なく「韓国はグローバル中枢国家を志向する。略してGPS」と話していた、とのことですが・・ちょうど一つ前のエントリーで中国関連内容を書きましたが、その中国共産党の機関紙でもある環球時報が、そんな~論(~構想)を、「中国や日本のような大国に囲まれているコン◯レックスからくる発想だ」と話しました。要は「米国のほうに傾くな」とする中国なりの観点を述べたものですが、なんとなく、指摘としては間違っていない気もします。ここからは引用してみます。<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・パクジン長官は去る5月16日、王毅 中国国務委員兼外交部長(※外相にあたいします)との初のオンライン画像通信でも、GPS構想をこう伝えた。「韓中関係が今年の修交30周年を迎え、相互尊重と協力精神をもとに、より成熟し健康に発展していくことを望む。価値と利益に基づく外交を展開していきたい」。しかし、それから二ヶ月後、韓国の「自由、平和、繁栄に寄与するグローバル中枢国家」構想に対し、中国官営メディア環球時報はこう反応した。

環球時報は26日専門家寄稿で、「(韓国の国家目標である)グローバル中枢は、力量と権力の中枢を意味するもので、韓国は地理的に中国と日本という強力な経済体の間に位置しており、中枢になるのが難しく、強大国が影響力を争う陣地であり、域内の政治・安全保障対立の現場として、仕方なく『葛藤の中枢』になるしかない」とした。李開盛(リ・カイソン)上海社会科学院国際問題研究所副所長はこの寄稿文で、「韓国の大国コン◯レックス」は、外交分野で、盧武鉉政権の「北東アジアバランサー論」や、尹錫悦政権の「グローバル中枢国家」のような、野心満々な目標として現れる」としながら、そう主張した。

 

李副所長は、「経済の奇跡を誇ってきた韓国が、武器輸出規模の世界8位に上がるなど、世界的に重要な武器輸出国となった」とし「韓国は『強国』に対する期待を追求し、それを韓国の国際的地位の向上手段としてきたのだ」・・・・「しかし、その輸出を裏付けてくれるのは韓米同盟であり、それは安保の支柱であると同時に、戦略を制限するものでもあり、韓米間の力量の非対称さにより、主要な議題において、韓国は米国の意思どおりに動くしかない」、「北朝鮮核問題と関連して米朝葛藤が激化すれば、安定的な朝鮮半島の平和体制が樹立されない限り、『中枢』などの地位は脆弱なものでしかない」と主張した。

彼は引き続き、「韓国の望みは、長期的で平和・安定的な地域環境で支えられなければならない」とし「北核問題による安全保障問題を妥当に解決し、他国の意思どおりには動かないようになってこそ、グローバル中枢国家になることができるだろう」と苦言した(UPIニュース)・・>>

 

最後の部分などは、中国の外交というか、対韓政策を表すものでしょう。でも、それ以外の部分は、中国ならではの指摘ではないだろうか、と思えます。米国側の記事はあまり読んでないのでなんとも言えませんが、日本、韓国のマスコミだと、こんな側面を指摘する記事はそうありませんから。単にコンがどうとかではなく、「目指すものは、『私も、状況の一部である』という自覚によるものではなく、自分がその状況の主役になろうとする心理である」という点です。すなわち、『大』だの、『強』だの、そんなものへの憧れでしかない、と。これを一つ前のエントリーとつなげて考えてみると、『ある陣営の一部として、一貫したスタンスがない』とも言えるかもしれません。

 

最近本ブログでよく取り上げる単語を使うなら、それらは『地位(韓国では位相ともいいますが)』のため、ともいえます。じゃ、もし、そんな地位が得られなかった場合、尹政権の『GPS』の経路案内は、どこを示すのか。例えば尹大統領がGPSを言い出した米韓首脳会談だって、そのあとすぐ「日米首脳会談のほうがずっと『上』だった」とする記事が出てきました。日本がもっと多くのものを得た、米国は韓国にはこれといって何もくれなかった、米国から『もらえ』なかった(過去エントリー)、などの記事でした。「ちょっと比較をするようで何ですが、バイデン大統領が日本に行って、なぜ国連安保理常任理事国支持をしたでしょうか。防衛力増強の支持だってそうですし。ところで、それらは、日本がずっと要求してきたものなんです。私たちは、あまりもらえていないのではないか、そう思ってしまいます」、などなど。

こんな流れがこれからも変わらず、例えば日韓首脳会談できず、米韓通貨スワップもできず、中枢国家と言えるほどの業績が出せず、それが世論に反映され、支持率が回復せず(政党支持率でもすでに野党が高くなっています)、任期はどんどん過ぎていく。そのとき、尹政権はどんな選択をするのでしょうか。中国側が言っている『他国の思い通りにならない』という言葉を、信じてしまうのではないでしょうか。それとも、すでに信じているのかもしれませんが。バランサーを言いながらバランス取ったことなどないし、運転者を名乗りながらうまく仲介できたことなどありません。尹政権のGPSは、どこへ『経路検索』を出すのでしょうか。

 

 

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